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安倍派幹部聴取 裏金継続誰が決めた 事務総長らの関与見極め


安倍派幹部聴取 裏金継続誰が決めた 事務総長らの関与見極め 自民党安倍派(清和政策研究会)の幹部(顔写真入り)
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信社

 自民党派閥の政治資金パーティーを舞台にした裏金事件は、安倍派(清和政策研究会)の歴代事務総長ら幹部4人の事情聴取に発展した。東京地検特捜部は会計責任者との共謀の有無を確認したとみられる。パーティー券の売り上げを議員側に還流する裏金化は「長年の慣習」(同派関係者)だったとされるが、特捜部は、一度廃止する方針を固めながら一転して撤回した経緯に注目する。誰が継続を決めたのか。特捜部は派閥幹部の関与を見極める構えだ。

 裏表知る立場

 「会計や金の取り扱いにはタッチしない」。2019~21年に事務総長を務めた松野博一前官房長官は先月下旬、周囲にこう話した。
 捜査対象の18年以降に派閥会長を務めた細田博之前衆院議長と安倍晋三元首相はいずれも死去しており、他の幹部の説明が実態解明の鍵を握る。だが現事務総長の高木毅前国対委員長も今月、記者団に「会計に関わっていないので何とも言いようがない」と発言した。
 事務総長の仕事は、年1回開く研修会や政治資金パーティーの段取り、内閣や国会、党内のポスト配分、「餅代」「氷代」と称する冬季、夏季の活動資金配布など多岐にわたる。派閥間の情報交換や連絡役も担う。
 役回りは派閥ごとに多少の違いはあるものの、派内の裏表を知り得る立場には違いない。ある事務総長経験者は「何も知りません、では済まないのでは」。別の派閥幹部は「会計書類に目を通さないなど考えにくい」と、松野氏らの発言の信ぴょう性を疑問視する。
 参院で唯一、派内実力者「5人組」に名を連ねる世耕弘成前参院幹事長の存在も大きい。ベテラン秘書は「選挙応援やポスト配分に絶大な発言力を持つ。衆院側は口を出せない」と説明する。

 暗黙の合意

 安倍派の還流疑惑は20年近く前にも一度話題になったことがある。
 ある検察幹部は「『前例に倣えでやりました』と言っても罪に問える」とけん制するが、別の幹部は「暗黙の合意を共謀と立証しなければならず、難しい」と指摘する。事務総長が代わるたびに事務方が政治資金収支報告書への不記載を報告していれば立件しやすいが、相談や報告、議員側の了承を裏付けるのは容易ではないと解説する。
 特捜部が注視するのは、22年に派内で一時浮上した還流廃止の議論だ。関係者によると、派内で還流取りやめに向けた動きが表面化したものの、結局実現しなかった。
 安倍派の会計責任者は数年前まで民間企業で働き、政治の経験は浅い。特捜部は、こうした人物が還流廃止、継続の議論を主導した可能性は低いとみているもようだ。

 裏付け

 元検事の亀井正貴弁護士は、選挙を控えた参院議員に限り、パーティー券の販売ノルマ分と超過分を合わせた全額が還流されていたとみられる点に着目する。運用の変更は会計責任者1人では判断できないはずだとし「相談された事務総長らが検討した上で回答していれば、それは指示を意味する」と強調する。
 政治家と事務方の共謀が認定された事件に、自民党の薗浦健太郎元衆院議員による政治資金規正法違反事件がある。メールや資料で秘書から収支の報告を受けていたことが裏付けられたという。
 検察関係者がこう言い切る。「議員までたどり着けるかどうかは、ブツ(証拠)次第だ」

(共同通信)