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物価高、猛暑追い打ち/年末回顧(上) 圧迫される暮らし/コロナ5類に、人手不足も


物価高、猛暑追い打ち/年末回顧(上) 圧迫される暮らし/コロナ5類に、人手不足も 東京・浅草寺の雷門前で記念撮影する外国人観光客ら。コロナ禍が明け、各地ににぎわいが戻った=11月
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 物価高に賃上げが追いつかず、記録的な猛暑が食品の値上げに拍車をかけ、身近なサービスの人手不足も表面化した2023年。コロナ禍が明け、街ににぎわいが戻る一方、暮らしへの圧迫感は強まった。
 23年春闘で、経団連会員の大手企業と中小企業の平均賃上げ率はいずれも約30年ぶりの高い水準となったものの、物価上昇のペースに追いついていないのが実情だ。

3万2千品目

 円安や原油相場の高騰で、9月には、レギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格が186円50銭に達し、政府が補助を拡充して対応。
 食品の値上げも相次いだ。帝国データバンクの調査では、食品値上げは加工食品から調味料や飲料、菓子、乳製品まで3万2千品目超に及び、昨年の約2万6千品目を大幅に上回った。

人身被害

 今夏の猛暑も、家計に追い打ちをかけた。夏(6~8月)の平均気温は統計開始から125年で最も高く、タマネギやトマト、ネギなどの野菜が不作となり、価格が上昇。9月には、学校給食の提供などを手がける食堂運営会社(広島市)が破産。一時、各地で学校給食の提供停止が相次ぐなど、食材の値上がりの影響は教育現場にも及んだ。
 東北や北海道ではクマによる人身被害が過去最悪のペースで多発。猛暑により、山で餌となる木の実が十分実らず、市街地に出てくるケースが増えているとみられる。

事業廃止

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5月、季節性インフルエンザと同じ「5類」へ移行。3年以上にわたった対策は「有事」から「平時」に転換、個人や事業者の判断となり、海外からの入国制限もなくなった。
 観光庁の宿泊旅行統計では、8月に国内のホテル・旅館に泊まった日本人と外国人は延べ6千万人を超え、コロナ禍前に迫る多さだった。
 一方で、旅行業界や飲食店など多方面で人手不足が顕在化。高齢化に加え、コロナ禍で交通需要が低迷した時期に離職が相次いだバスやタクシーの運転手不足も深刻さを増した。9月には大阪府内の富田林市など4市町村でバス14路線を運行していた「金剛自動車」が、乗務員不足と利用者減を理由に、事業廃止を決定。JR四国は24年春までに管内の駅の約86%を無人化すると発表した。
 そんな中、飲食店や宿泊施設で配膳ロボットが導入されたり、人工知能(AI)を使った収穫ロボットが自動で野菜を収穫したりと、人手不足を補うためのIT活用が広がる。暮らしを支える技術の進展に期待したい。
 東京電力福島第1原発処理水の海洋放出が8月に開始。国内で大きな風評被害は見られなかったが、中国が日本産水産物の輸入を停止、漁業者は苦境に立たされている。