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再生医療、「有害」報告過少か/自由診療で把握漏れの恐れ


再生医療、「有害」報告過少か/自由診療で把握漏れの恐れ 再生医療の有害事象報告数の比較
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 国立がん研究センターなどのチームはこのほど、病気の治療のため細胞を加工して投与する「再生医療」で、公的医療保険の対象となっているものと比べ、自由診療では有害事象(治療で生じた好ましくない事象)の報告数が著しく少ない可能性があると指摘する研究結果を発表した。再生医療安全性確保法に基づき、各地に設けた審査委員会を通じて国が実態を把握する仕組みだが、適切に機能していない恐れがある。
 がんセンターの一家綱邦生命倫理部長は「『有害事象ではない』『再生医療が有害事象の原因ではない』などと医療機関側が判断しているケースがあるのではないか。再生医療が法に基づいて安全に実施されているとする根拠が揺らぎかねない」と話している。
 再生医療法では、患者の健康に問題が起きた場合、医療機関は委員会に報告し、重篤な場合は国にも報告する。チームは、各地の委員会が公開している2019年度と20年度の審査の議事録を基に、医療機関が報告した有害事象の数を調べた。
 自由診療での報告は、投与10万回当たり10回未満だった。一方で、薬事承認された再生医療等製品では、投与3~4回当たり1回の報告があった。チームは、効果や安全性が不確かな手法も含まれる自由診療の有害事象の頻度が、承認された再生医療等製品と比べてかなり少ないのは疑問だと指摘している。
 成果は11月16日付の米科学誌「ステム・セル・リポーツ」に掲載された。

<用語>再生医療の有害事象報告 2014年に施行された再生医療安全性確保法により、再生医療を計画する医療機関には国が認定した委員会による事前の審査が義務づけられた。委員会が主に安全性を審査した後、医療機関は国に計画を届け出ることになっている。実際の治療で患者の健康に問題が生じた場合、医療機関は委員会に報告する他、「死亡」「入院」「障害が残る」といった重い有害事象は、国にも報告する必要がある。