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年末回顧(下)/子どもの安全どう守る/性被害、薬物汚染が顕在化/時代に合わせた対策を   


年末回顧(下)/子どもの安全どう守る/性被害、薬物汚染が顕在化/時代に合わせた対策を    東京・歌舞伎町の「トー横」で行われた一斉補導 =7月(画像の一部を加工しています)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 性被害や薬物汚染の広がりが顕在化し、子どもの安全をどう守るかを考える年に。法整備が進んだ一方、子どもを巡る環境が複雑化して見えにくくなる中、時代に合わせた対策が求められる。

発覚

 旧ジャニーズ事務所の性加害問題をはじめ、東京都の練馬区立中学校の校長による生徒への性加害事件や、大手中学受験塾の元講師による教え子の盗撮事件など子どもの性被害が相次いで発覚。子どもの安全を守るべき立場の大人による加害は社会に衝撃を与えた。
 子どもや女性を守るためのルール整備が進み、性犯罪規定を見直した改正刑法が7月に施行。性交同意年齢が13歳から16歳に引き上げられ、性的目的で子どもを手なずける「性的グルーミング」を罰する罪を新設した。望まない妊娠を防ぐため性交後に服用する「緊急避妊薬(アフターピル)」の医師の処方箋なしでの試験販売も始まった。
 政府は、子どもと接する仕事に就こうとする人に性犯罪歴がないことを証明する「日本版DBS」制度の導入を目指す。

性教育

 ただ、制度面の整備だけでは限界があり、多くの専門家が性教育の必要性を指摘する。日本世論調査会の調査では、子どもを性被害から守るための重要な取り組みに「子どもへの性教育」を選んだ人が28%に上り、社会での理解の広まりがうかがえた。人権やジェンダー平等も学ぶ「包括的性教育」も64%が「導入した方がよい」と答えた。
 統一地方選では41道府県議選の女性当選者が過去最多となった一方、第2次岸田再改造内閣の副大臣と政務官で女性がゼロに。6月に発表された「男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告」で日本は過去最低の125位(調査対象は146カ国)となるなど、格差は依然、埋まらないままだ。

居場所

 全国の小中学校で2022年度に不登校となった児童生徒は29万人超と過去最多を更新した。小中高校などでのいじめ認知件数も68万件超で最多に。国や自治体は、オンライン上での学校開設など対策を進めている。
 一方、家や学校に居場所がなく、生きづらさを抱える若者が交流サイト(SNS)でつながり、東京・歌舞伎町の「トー横」や大阪・道頓堀の「グリ下」など繁華街に集まる状況が続く。居場所の確保は喫緊の課題だ。
 SNSが若者をトラブルに巻き込むケースも目立った。高額報酬をうたい犯罪の実行役を募る「闇バイト」や、大手回転ずしチェーンなど飲食店の客による迷惑動画の投稿が社会問題化した。
 薬物汚染も若い世代に広がった。「大麻グミ」を食べた人が各地で体調不良を訴え、「トー横」で若者が市販薬を過剰摂取して救急搬送されるケースが相次いだ。日本大アメリカンフットボール部でも違法薬物事件で部員が逮捕された。