今年の始まりは1月の琉球新報社主催「ドン・キホーテ」全幕公演。全幕上演の難しい沖縄で2年連続での上演は喜ばしく、作品の明るさに県外からのゲストも加わり、華やかな新春の幕開けとなった。
6月にはダンス劇作家の熊谷拓明が来沖し、「醒(さ)めない熱波」を上演。セリフを交え踊るジャンルレスな作品に、バレエ・ダンス界以外の来場も多く、熊谷の独特な世界に引き込まれた。
7月にはダンスプロジェクトTAMATE箱がピナバウシュが率いた「ヴッパタール舞踊団」などで活躍した瀬山亜津咲氏、ファビアン・プリオヴィル氏を講師に迎えワークショップを開催。ハイクオリティーな内容を沖縄に迎えられたことは喜ばしく意義深い。
8月に日本バレエ協会沖縄支部主催「バレエフェスタ2023」が開催した。1部は同協会コンクール入賞者のヴァリエーション(ソロ)、2部は2022年「全国合同バレエの夕べ」(東京・新国立劇場)で好評を得た「ライモンダより第3幕」。グラズノフの美しい旋律に乗せ、アンサンブル、キャラクターダンスで幕を開け、NSバレエアカデミー主宰長崎真湖がタイトルロールのライモンダを好演した。このようにスタジオの枠を超え作品に向かう機会は今後も期待したい。
9月にはキーウ・クラシック・バレエ団(ウクライナ)が来沖。十分なクオリティーとは言い難い上演であったが、依然厳しい情勢の中、芸術を怠らず、伝えることを続けるカンパニーの「白鳥の湖」にあたたかい拍手が送られた。
10月は、松川夏子主宰Company Dream Artが「子どもバレエ」シリーズを開催した。恒例となった観劇マナー講座とバレエの振り「マイム」の解説に始まり、シリーズ特有のナレーションを交えたオリジナルストーリーの展開に、満員の客席は大いに盛り上がった。
後半には那覇市文化芸術劇場なはーとでCo.山田うんカンパニー(東京)が「In C」を上演。集客が厳しい様子は残念であったが、テリー・ライリーのミニマルミュージックを心地よく響かせた空間での群舞は観客を異空間へと誘った。
12月には環バレエアートスタジオ主催「世界で一番の贈りもの」が沖縄市のあしびなーで上演。朗読を交えた表現にはクリスマス休戦の実話を「伝えたい」思いが見え、平和への願いを込めた踊りは、争いの終わらない現実を振り返る、年の瀬にふさわしいものであった。
その他、複数のコンクールなど活気ある年であったが、バレエが習い事の域を越え芸術へと向かうには、丁寧かつ大胆な業界の改革と、観客となる皆さんの目がさらに必要と感じる1年だった。 (バレエ専門舞台監督)
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バレエ・ダンス/平安山美香/スタジオの枠超え好演
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琉球新報朝刊
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