トイレ清掃員の平山の毎日は、昨日も今日もそしてきっと明日も同じリズムを刻む。近所の高齢女性が使う竹ぼうきの音でめざめ、鉢植えに水をやり1本の缶コーヒーとともに出勤。一言のセリフもなく上記の日常が描かれるが、退屈どころか、えもいわれぬ豊かさの中に迷い込む。それはきっと、平山にとっては毎日がかけがえのない一日だから。
すれ違う人や、頰をなでる風や、木々の隙間から差す木漏れ日は今日だけの特別なもの。雑多な出来事が彼を少し悩ませたりするが、朝は必ずやってくる。彼が日々の時間をいとおしむように過ごすまでには、きっと言葉にできない出来事も多々あったのだろうと、勝手な想像が膨らんでは消えていく。
役所広司は、平山の愚直で丁寧な暮らしをたたずまいと表情だけで表し豊かにしていく。ひとさまのささやかな一日に涙しながら、自分のつまらないと思っていた日常を、そっと抱きしめてやりたくなる。監督はヴィム・ヴェンダース。(スターシアターズ・榮慶子)
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PERFECT DAYS/シネマQとシネマライカム・公開中/かけがえのない毎日を
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琉球新報朝刊
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