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認知症共生、あす法施行 基本計画に本人意見反映へ


認知症共生、あす法施行 基本計画に本人意見反映へ 認知症基本法のポイント
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 認知症の人が尊厳や希望を持って暮らせる共生社会実現が目的の新法、認知症基本法が2024年1月1日に施行される。首相が本部長の「認知症施策推進本部」設置を規定し、国が本人や家族らの意見を反映し「基本計画」を作る。都道府県や市区町村にも策定を促し、各地域で本人の社会参加や相談・ケア体制整備などが期待される。
 認知症に特化した初の法律で、23年6月に議員立法で制定。団塊世代が全員75歳以上となる25年には認知症の人は推計675万~730万人で、高齢者の約5人に1人に上ると見込まれる。
 法律は基本理念に、国や自治体が対策に取り組む責務があり、国民も認知症の理解を深めることに努めると明記。施策として、(1)学校教育などで理解増進(2)交通安全の確保、使いやすい製品普及(3)社会参加の機会確保や雇用継続へ啓発(4)適切な保健医療や福祉サービス提供(5)本人や家族の相談体制整備(6)予防や診断、治療、リハビリの研究―などが盛り込まれた。
 政府はこうした対策の基本計画作りに向け、本人や家族、医療関係者などから意見を聞く。都道府県や市区町村は努力義務として、各地域の本人らの意見を踏まえ「推進計画」を策定する。
 法施行に先立ち、岸田文雄首相は12月25日の認知症関連の会合で「希望を持って生きるという新しい認知症観の理解促進が重要だ」と述べ、早期に基本計画を策定すると強調した。
 12月、アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」が保険適用され、実用化が始まった。政府は早期診断や投与の体制整備も進める。
 日本医療政策機構の栗田駿一郎シニアマネジャーは「交通や医療、介護サービスへのアクセス状況は都市と地方で異なる。自治体レベルで本人や関係者の声を聞き、地域の実情に合う施策を進めてほしい」と語った。
 認知症 さまざまな脳の病気で神経細胞の働きが悪くなって認知機能が低下し、日常生活に支障が出る状態。発症者の7割近くを占めるアルツハイマー型では異常なタンパク質が脳に蓄積し、物忘れや判断力の衰えといった症状が現れる。ほかに脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型などがある。厚生労働省によると、推計で25年には65歳以上の約5人に1人、40年には約4人に1人にまで増える可能性がある。65歳未満で発症する若年性患者もいて、就労継続などが課題となっている。