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群発地震引き金か 石川震度7 断層破壊、東西に拡大 阪神大震災と類似点


群発地震引き金か 石川震度7 断層破壊、東西に拡大 阪神大震災と類似点 震源付近の活断層
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 1日に石川県で最大震度7を観測した能登半島地震。建物の倒壊や大規模火災など甚大な被害が明らかになりつつある。半島周辺では、約3年前から先端の珠洲市を中心に群発地震が発生。今回の地震の引き金となった可能性が指摘される。建物や道路に多くの被害をもたらした1995年の阪神大震災と似た揺れも検出され「恐れていた最悪のシナリオが起きてしまった」と頭を抱える専門家もいる。 (1面に関連)
 無数の亀裂が入った道路、波打ったり落下したりした橋、無残に倒壊した家屋…。2日午前、石川県の上空からは大地震の爪痕が確認できた。珠洲市などの沿岸で多数の家屋が津波に流されたとみられる形跡もあった。
 「地震の活動領域はこれまでの3年間よりかなり広くなっている」。1日夜に記者会見した気象庁の担当者は、マグニチュード(M)7・6を記録した今回の地震についてこう指摘した。
 能登半島での地震活動は2020年12月ごろから活発化、23年末までに震度1以上の地震を506回観測。22年6月に震度6弱、23年5月には震度6強の大きな地震もあった。その後は一時的に落ち着いたが再び活発化。そして今回、活動領域が一気に拡大、1日午後9時までに震度1以上が59回発生し被害は能登半島を中心に新潟県や福井県など広範囲に及んだ。
 群発地震の一因と考えられているのが、地下深くから上がってきた水などの「流体」だ。海のプレートが水を取り込んだ状態で日本列島の下に沈み込み、能登半島の地下数百キロあたりで水が分離して上昇、周辺の岩盤に圧力をかけたり、断層を滑りやすくしたりしていると推定されている。
 京都大の西村卓也教授(測地学)は「今までの群発地震と断層が動いたメカニズムは同じだが、断層の破壊が東西にさらに広がって巨大な地震が発生した」と分析。「断層の割れ始めに流体が関わっていると思われる」と推測する。
 国土交通省の調査検討会が14年9月にまとめた報告書は、能登半島沖の複数の活断層を震源とするM7・6の地震を想定していた。金沢大の平松良浩教授(地震学)は「輪島沖と珠洲沖に延びる二つの海底断層が主に動いて今回の地震が起こった。長さ50キロぐらいの断層がずれた可能性がある」とみる。
 現状では珠洲市だけでなく、半島の西側にある輪島市でもビルや木造家屋の倒壊、大規模火災などの被害が多数報告されている。「断層の破壊が輪島市の方向に進み、地震波がより強く出たため、揺れや被害が大きくなったのでは」と平松教授。
 中林一樹・東京都立大名誉教授(都市防災)は「震源に近い地点は強烈な揺れになり、倒壊や津波、火災、地滑り、液状化など地震災害のあらゆる要素が起きた」と指摘する。
 京都大の後藤浩之教授(地震工学)によると、石川県輪島市や珠洲市などで観測した揺れは、阪神大震災の際に建物などに大きな被害が出た神戸市内の揺れと似ており、木造家屋に大きな被害を出しやすいとされる周期が1~2秒の揺れも含まれていた。
 後藤氏は「阪神大震災と同程度の揺れを観測した場所は1カ所だけではない。揺れが大きかった場所は能登半島北部のかなり広範囲にわたっており、被害も広い地域で出ていると考えられる」と話した。