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「輪島朝市」で大規模火災 古い木造密集、被害拡大 津波影響 消火遅れ


「輪島朝市」で大規模火災 古い木造密集、被害拡大 津波影響 消火遅れ 一面が焼けた「輪島朝市」=3日午後2時59分、石川県輪島市(共同通信社ヘリから)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 最大震度7を観測した能登半島地震では、石川県輪島市の観光地「輪島朝市」周辺で大規模火災が起き、甚大な被害が生じた。古い木造建築が密集する地域で、専門家は狭い路地が多い地理的条件に加え、大津波警報が出た影響などで消火作業の初動に遅れが出た可能性を指摘。「全国的な防火対策が必要だ」と警鐘を鳴らす。

懸念

 「何もかもなくなってしまった。もう再建は無理だろう」。3日、現場近くで約100年続くそば店を営む浅野鉄雄さん(85)は、なじみのある町に白煙がくすぶる光景を眺め、つぶやいた。
 市や消防によると、火災は地震直後の1日夕に発生。3日までに約200棟に延焼し、焼失面積は約4千平方メートルに達したとされる。同所で約1200年前から続く「輪島朝市」は、4日から初市の予定だった。
 気象庁によると、能登地方は2020年12月から地震が活発化。たびたび現地を訪れている防災システム研究所の山村武彦所長は「火災被害が出やすい条件がそろっていた」と話す。木造建築は燃えやすい上、消防車が入りにくい狭い路地が多く、耐震性が低い瓦屋根の家屋がつぶれると道をふさいでしまう点などを懸念していたという。

消防力

 消防態勢も万全ではなかったとみられる。市消防によると、現地を管轄する消防署にあるポンプ車は、2カ所の分署を合わせても数台のみ。大量のがれきで消火栓が十分に使えず、土砂崩れで道路も寸断されたことから、山村氏は「そもそもの消防力が小さい上、他地域からの応援も遅れた可能性がある」とみる。
 地震に伴う大規模火災は1995年の阪神大震災でも発生し、7千棟を超す被害が出た。輪島朝市と同様に木造建築が集まる北九州市小倉北区の旦過(たんが)市場では、22年の4月と8月に火災が相次ぎ、8月は3千平方メートル以上が焼けた。これを受け総務省消防庁は、木造飲食店の密集地で防火指導を強めるよう都道府県などに通知していた。

備え

 木造建築が集まる地域は各地にあり、対策は急務だ。東京都では、JR山手線の外周を中心に多くの木造密集地が存在する。都は首都直下など大規模地震に備え、道路を拡張したり公園を整備したりと、延焼を食い止めるための対策を急ぐ。だが住民の高齢化や複雑な権利関係で、容易に進まない面もある。
 山村氏は「大規模地震の際には、消火栓が使えなくなることを前提とした対策をすべきだ。地域に貯水槽を増やすための予算措置や自主防災組織の拡充など、初期消火の態勢を強化する仕組みづくりも必須だ」と話した。