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交通網寸断「陸の孤島」に 発生72時間超 被災者不安募る 能登半島地震


交通網寸断「陸の孤島」に 発生72時間超 被災者不安募る 能登半島地震 揚陸艇から陸揚げされた重機(上)=4日午前10時27分、石川県輪島市(共同通信社ヘリから)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 最大震度7を記録し、犠牲者が80人を超えた能登半島地震は4日夕、生存率が大きく低下する発生72時間が経過した。度重なる激しい揺れで土砂崩れや道路損壊が続出し、交通網が寸断。電波状況も悪く、被災地が「陸の孤島」と化した。石川県は人命救助を進めるため、安否不明者の情報を公表した。自衛隊も海上から重機を投入し、救援活動は本格化するが被害の全容は見通せず、被災者の不安も募る。 (1面に関連)

 4日午前、石川県輪島市の大川浜。海上自衛隊のホーバークラフト型揚陸艇(LCAC)2隻がごう音を響かせて到着、重機5台とトラックなどが次々と陸揚げされた。周辺の海底が地震により隆起し、船舶が接岸できず自衛隊の出番となった。

奥能登

 「陸路が使えない状況は、東日本大震災などで過去に経験済みだ」(自衛隊幹部)。被害の大きい輪島市、珠洲市など「奥能登」と呼ばれる半島北部は限られた陸路の多くが寸断されたまま。自衛隊は艦艇や航空機を中心に人員や物資を運ぶ。
 国土交通省によると、半島中部の七尾市から外周沿いに珠洲市、輪島市を経由して金沢市方面と結ぶ国道249号などでのり面崩落、路面の陥没も相次いだ。県の集計では4日午後3時時点で、能越自動車道の他41路線93カ所が通行止めに。港湾や能登空港(輪島市)も損壊、通行できる道路は渋滞し、被災者の安否確認や支援物資を届けるのが困難な状況が続く。

搬送7時間

 医療現場への影響も深刻だ。持病が悪化した被災者を半島北部の能登町の避難所から金沢市へ3日に車で搬送した際、遠回りするなどして約7時間を要した。災害派遣医療チーム「DMAT」として活動した中部国際医療センター(岐阜県)の山田実貴人副病院長は「たどり着けない避難所もあり、医療ニーズを確認しきれない。医療者を送り込めば、やれることはたくさんあるのに」ともどかしさを口にした。
 厳しい生活を強いられる被災者は不安を募らせる。輪島市の自営業吉田正さん(66)は「食べ物や水などが全然届かず、ガソリンも足りない」。珠洲市に帰省中に被災した福井市の大学生井林千裕さん(22)も渋滞を懸念し「自衛隊や救助隊の到着が遅れるのが不安だ」と話した。

リスク

 石川県は3日深夜に連絡が取れない安否不明者15人の氏名を公表。その後断続的に追加し、4日午後6時現在で179人に膨らんだ。安否不明者の氏名公表の判断は自治体で割れていたが、2021年の静岡県熱海市の土石流災害で、発生約58時間後に県などが64人の氏名を公表。情報が多数寄せられ、翌朝に約40人の無事が確認された。
 捜索範囲の絞り込みにもつながり、石川県はドメスティックバイオレンス(DV)の被害者らを除いて安否不明者の氏名は発生から48時間をめどに、家族の同意を得ないで原則公表すると決めていた。静岡大防災総合センターの牛山素行教授(災害情報学)は、安否不明者の公表を評価し「死亡者の状況も可能な範囲で明らかにした方がいい。住民には重要な情報で今後の教訓になる」と指摘。能登半島は三方が海に囲まれ、付け根部分が細い地理的特性から、災害時の救助が難しいとして「住民は家屋などの建物を、行政は道路や港湾といったインフラをより耐震化する必要がある」と強調した。