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発生5日、被害把握進まず 能登半島地震 アクセス困難、自治体焦り 「過去最悪に近い災害」 


発生5日、被害把握進まず 能登半島地震 アクセス困難、自治体焦り 「過去最悪に近い災害」  死者・不明者多数の主な地震
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 発生から5日目となった能登半島地震は増え続ける死者数に加え、連絡が取れない安否不明者も大幅に増え、人的被害はさらに膨らむ見通しとなってきた。アクセスの困難さから、支援が手薄な被災自治体で確認に手間取っており、「実態把握に時間を要している点で、過去最悪に近い災害」との指摘も出ている。 (1面に関連)
 「自衛隊、警察、消防でしらみつぶしに行っているが、遠いところはなかなか行けない」。石川県輪島市の坂口茂市長は5日、安否確認が済んでいない地域がなお残る現状に焦りを募らせた。
 孤立集落や市街地郊外の作業が遅れており、この日午前で安否確認できたのは「感覚的には8割以上」と説明した。
 同様に孤立集落を抱える石川県珠洲(すず)市。災害対策本部に掲示された道路状況地図は、能登半島北側を東西に走る道路の大半が不通のままだ。
 「数時間かけて歩くか、田んぼに石を引くなどした上で自衛隊の特殊車両で向かうしかない地域も残っている」と泉谷満寿裕市長。

帰省者

 元日の地震発生という事情も安否確認を困難にしている。帰省していた人々が巻き込まれた可能性があり、集落に誰がいたのかを確認するには、各地域に頼らざるを得ないという。
 石川県は今回、安否不明者の氏名について、地震発生から約55時間後の3日深夜、まず15人を発表した。迅速に公表すれば生存者の情報が本人や周囲から多数寄せられ、捜索対象が絞り込めた近年の災害事例に沿った対応だった。
 2018年の西日本豪雨で岡山県が早期の公表に踏み切り、安否不明者の数が激減した実績がある。21年に起きた静岡県熱海市の土石流災害でも同様の効果があった。
 しかし、能登半島地震では、氏名公表により生存が確認できた人もいるものの、全体状況として安否不明者数は大幅に増える一方だ。
 日本災害情報学会前会長の片田敏孝・東大特任教授(災害社会工学)は「安否不明者の数が減らないので、犠牲になった人が含まれている可能性がある。死者数はさらに増えるのではないか」と懸念する。
 「被害の実態が明らかになるスピードが非常に遅い。過去の災害と比べても最悪に近い」と危機感を募らせる。

初動

 実態把握が被災自治体だけでできなければ、現地への支援が不可欠だが、手薄な状況が続く。
 片田特任教授は「被災地へのアクセスが土砂崩れなどで極めて限られている上、能登半島全体が被災し、周辺自治体の助けも借りられない。救援体制が機能していない」とみている。
 能登半島地震の死者の死因はまだ示されていないが、片田特任教授は「古い木造家屋が多く、家屋倒壊による死者がほとんどではないか」と推測している。
 災害対応にあたる内閣府の中堅幹部は「大きな揺れが多い地域で、警戒は続けていた。ただ、ここまで家屋が倒壊し、大きな人的被害が出るとは思わなかった」。松村祥史防災担当相は5日の記者会見で、能登半島の被害が大きく、悪天候も続いたとした上で「道路と輸送経路の確保が難しかったのが悩みだった」と初動対応を振り返った。