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国会にらみ裏金解明へ 池田議員逮捕 異例の対応、捜査加速 特捜「罪証隠滅の恐れ」


国会にらみ裏金解明へ 池田議員逮捕 異例の対応、捜査加速 特捜「罪証隠滅の恐れ」 池田佳隆容疑者の事務所入り口には「しばらく事務所を閉所させていただきます」と掲示されていた=7日午後、名古屋市天白区
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民党派閥パーティーの裏金事件で東京地検特捜部は7日、安倍派(清和政策研究会)の衆院議員池田佳隆容疑者(57)=比例東海、同日付で自民除名=の逮捕に踏み切った。「形式犯」との見方もある政治資金規正法違反事件では極めて異例だ。特捜部は今月下旬の通常国会召集をにらみ、還流システムを主導した派閥側と現金を受領した議員側双方の捜査を加速し、裏金づくりの全容解明を進める。 (1面に関連)

 「(政治資金収支報告書の虚偽記入は)誰の指示か」「事務所ではどう連絡を取っていたのか」
 昨年末、約6時間に及んだ池田容疑者周辺の任意聴取。検事は同じ内容を重ねて尋ね、メールやLINE(ライン)の履歴を見せるよう迫った。
 関係者によると、特捜部は昨年12月27日の池田容疑者関係先の家宅捜索でパソコンや日程表、金銭の動きを示す表など30点超を押収。検事は「ブツ(証拠)が少なすぎる。破棄したのではないか」と疑いの目を向けた。特捜部は7日、逮捕に関して「具体的な罪証隠滅の恐れがある」と報道陣に説明した。
 池田容疑者の聴取は捜索前から年明けまで複数回に及んだ。政策秘書で会計責任者の柿沼和宏容疑者(45)はより多くの聴取を受け、任意段階では黙秘していたという。
 規正法は収支報告書の作成義務が課される会計責任者が一義的に立件対象となる。特捜部は押収物や聴取内容から具体的な指示や了承があり、池田容疑者の共謀を問えると判断したもようだ。

不合理
 自身の政治団体を巡る規正法違反容疑での現職国会議員の逮捕は、2003年の坂井隆憲衆院議員(当時)以来となる。この時はヤミ献金の虚偽記載総額が約1億2千万円に上ったことに加え、秘書らへの証拠隠滅を指示した疑いもあった。
 一方、04年に村岡兼造元官房長官が在宅起訴された日本歯科医師連盟の献金隠し事件のように、そもそも検察は、1億円規模の虚偽記載でも政治家本人の逮捕に慎重だったとされる。22年に特捜部が立件した薗浦健太郎元衆院議員の政治資金パーティー虚偽記載事件では、元議員が関与を認めていたこともあり、略式起訴にとどまった。
 薗浦元議員の虚偽記載額は約4600万円で、池田容疑者とほぼ同額だが、なぜ対応は分かれたのか。元検事の落合洋司弁護士は「会計責任者との共謀の証拠が明確にあるのに、不合理な説明をしているからではないか」と推測する。

捜査の鍵
 政界関連の捜査は国会審議への影響を最小限にするため、閉会中に処分するのが通例だ。通常国会召集は今月22日か26日が見込まれ、特捜部に残された時間は少ない。
 総額6億円近くに上る安倍派の裏金づくりの解明には、受領額5千万円超とされる大野泰正参院議員や、4千万円超とみられる谷川弥一衆院議員ら多額の還流を受けた議員側だけでなく、派閥側の捜査が鍵を握る。
 各1千万円超を受領したとされる松野博一前官房長官、高木毅前国対委員長らは派内の実務を取り仕切る事務総長だったため、派閥の会計責任者からどのような報告を受けていたかも焦点となる。