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「派内の地盤固め」か 収支報告書訂正に「悪手」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民党安倍派(清和政策研究会)の裏金事件は7日、議員の逮捕で新たな局面に入った。他の関係者に先行して立件される形となった池田佳隆容疑者(57)は安倍晋三元首相に近く、青年会議所の人脈を生かして派閥のパーティー券を大量に売りさばいていたとされる。特定の使途はなく「派閥内での地盤固め」(党関係者)が目的だったとみられる。疑惑発覚直後に政治資金収支報告書を一方的に訂正した対応は、党内では「悪手」と批判されていた。
 「池田さんは私の右腕だ」。2021年10月、名古屋市のJR大高駅前。衆院選応援に入った萩生田光一前政調会長が池田容疑者の隣で声を張り上げた。池田容疑者は当時、文部科学副大臣。文教族で知られる萩生田氏は「副大臣として頑張って」とも激励した。
 池田容疑者は名古屋青年会議所理事長や日本青年会議所会頭を経て、12年の衆院選で初当選。安倍氏との出会いをきっかけに国政へ進み、同氏の側近だった萩生田氏の下でキャリアを積んだ。
 公式ホームページによると、06年に当時官房長官だった安倍氏と面会。北朝鮮によるミサイル発射が話題となり、安倍氏の「日本は私たちが必ず守ります」という言葉に「国民の生命を守ることは政治家の使命なのだと強く感じた」とつづった。21年の衆院選では安倍氏自身も池田容疑者の応援に駆け付けた。
 最近5年間で計約4800万円の還流を受けたとされる池田容疑者。事務所内で最古参だった柿沼和宏容疑者(45)が企業を回り「派閥のパーティー券を買っていただけないでしょうか」と頭を下げることもあった。
 派閥とのやりとりや事務所内の指示系統に加え裏金の使途も今後の焦点となる。池田容疑者に近い名古屋市議らによると「国産車に乗り、派手な飲み食いもしない」政治活動の資金が必要だったのではなく、安倍氏や萩生田氏にいい顔をしたかったのではないかとみる。
 池田容疑者は疑惑発覚後の昨年12月、安倍派から20~22年に計約3千万円の寄付があったと認め、資金管理団体の収入に追加した。取材に、党から派閥を介して提供され、使途の報告義務がない政策活動費と認識していたと文書で釈明した。政策活動費は一般に大臣経験者などの幹部にしか支給されず、派閥を仲介することもないため、法務省幹部はこの釈明を「無理筋」と批判。ある党関係者も「派閥との擦り合わせが済んでいない段階で訂正するのは悪手だ」と非難した。
 雲隠れを続けた末に逮捕された池田容疑者。「真面目に議員活動をやっていた。隠れたりせず『ちゃんと説明します』と言えばよかったのに」。後援会関係者の一人が落胆した様子で話した。