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被災者「災害関連死」から守って 能登半島地震から1週間 宇都彰浩弁護士 広域避難、人間的な環境を


被災者「災害関連死」から守って 能登半島地震から1週間 宇都彰浩弁護士 広域避難、人間的な環境を 宇都彰浩弁護士
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 能登半島地震から1週間が経過した。直面する課題について、2011年の東日本大震災などで支援を続けてきた宇都彰浩弁護士(仙台弁護士会)に聞いた。
  (1面に関連)
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 東日本大震災では、体育館などで長期間の避難生活を送り、体調を崩して亡くなる人が多数出た。さまざまな事情で避難所まで行けず、被災した住宅で食事や医療の提供を受けられないまま弱っていく人もいた。地震や津波から助かったのに、命を落としてしまう「災害関連死」だった。
 能登半島地震の被災地で活動する弁護士や支援者の話を総合すると、避難者の多さや交通アクセスの寸断で、今も食事や物資が十分に行き渡っていない避難所が多い。国は「プッシュ型支援」で物資を送っていると強調する。しかし、避難所に入らず、車中泊や在宅避難などをしている人がどれぐらいいるのかも把握できていない。
 真冬という時期も事態を深刻にしている。暖房が効かない避難所も多く、大変寒い。阪神大震災ではインフルエンザが避難所で流行した。免疫力が弱くなってゆく。スマートフォンが通じない地域も多く、情報不足も被災者を不安にしている。
 過去の大災害では、資金に余裕がある人や車を運転できる人は自発的に被災地を離れ、仮住まいに入る傾向があった。いつの災害でも、被災地に残るのは資金的に厳しい人や移動手段を持たない高齢者など災害弱者と呼ばれる層だ。
 強い余震が続く中、この厳しい現状では、被災者が地元をいったん離れ、宿泊施設などに移る対応を検討すべきではないか。できるだけコミュニティーを維持できるよう、集落などを単位としてマイクロバスなどで移る。こうした広域避難を早急に講じてほしい。
 住宅の倒壊で、避難生活は長期化するだろう。修繕で済むレベルではなく、再建までにはかなりの時間がかかる。
 建設型仮設住宅の建設準備が始まったが、私は否定的だ。用地選定や着工、入居と時間がかかる。必要戸数を確保できるとは思えず、現実的ではない。その間、寒い避難所にとどめるのはあまりにも酷だ。
 被災地から離れた地域の賃貸住宅をみなし仮設住宅として活用することや、ホテルなどの宿泊施設を利用することを提案する。21年の静岡県熱海市の土石流災害などで、ホテルを避難先として活用した例がある。
 最優先すべきなのは、地震で助かった命を守ることだ。現状では多くの関連死が出るかもしれない。厳しい状況に置かれている被災者が、安心して眠り、食べられる人間的な環境に戻さないといけない。それが復興への第一歩となる。
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 うと・あきひろ 1973年鹿児島県生まれ。日本災害復興学会理事兼復興支援委員会委員長。