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被災障がい者 支援急務 物資不足、避難生活に不安


被災障がい者 支援急務 物資不足、避難生活に不安 被災した障害者への支援の動き
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 最大震度7を観測した能登半島地震では、被災した障がい者への支援が急務となっている。長期化が予想される避難生活への不安もあり、意思疎通の補助や医療的ケアなどを必要とする「災害弱者」への十分なサポート体制整備が課題だ。障がい者団体が安否を確認したり物資を現地に届けたりといった取り組みも、少しずつ始まっている。
 石川県聴覚障害者協会(金沢市)は地震発生を受け、安否を連絡するよう会員らに呼びかける動画をLINE(ライン)などで公開した。ただ通信環境が悪く、連絡が付きにくい状況だという。
 2011年の東日本大震災では、避難所でおにぎりや飲料の配布時に音声のみの案内がほとんどで、飲食できないケースがあった。今回も道路や水などライフラインに影響が出ており、手話通訳が付きっきりで支援することは困難。協会担当者は「聞こえない仲間が必要な情報を得られているか心配だ」と気をもむ。孤立しがちな聴覚障がい者を定期的に訪ね、食料などの物資も配る予定だ。
 聴覚障がい者向け支援の企業、プラスヴォイス(仙台市)は1日から当面、遠隔手話通訳サービスを24時間無償で提供する。スマートフォンの映像などを通して通訳者と手話でやりとりした内容を、音声で伝えてくれる仕組みだ。同社のウェブサイトから利用できる。三浦宏之社長は「地元の通訳自身も被災者であり疲弊している。遠隔支援する体制が大切だ」。
 石川県視覚障害者協会は交通ルートが確保されれば、当事者の自宅を訪れて安否確認を進めたいという。日本盲人福祉委員会(東京)も今後、石川、富山両県に支援チームの派遣を計画しており、避難所で支援に当たる。
 全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者や家族でつくる日本ALS協会(東京)によると、新潟、富山、石川、福井4県のうち震度5強以上を観測した自治体に患者や家族会員約55人が住む。ALS患者の多くは人工呼吸器を使い、のどに詰まるたんの吸引などのケアが必要だ。
 岸川忠彦事務局長は「避難を余儀なくされている患者もいるようだ。被災地ではヘルパーがずっと付き添うことは難しく、家族の負担も大きくなる」と語る。サポートが受けられる福祉避難所に早く移れるよう願う。
 知的障がい者のアート作品の販売などを手がける企業、ヘラルボニー(盛岡市)は、避難時の当事者の孤立化を防ごうと、ウェブサイトを開設した。知的障がいや発達障がいなどの特性やコミュニケーションの取り方を、避難所にいる人たちに向けて紹介している。