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単身・中高年男性 孤立防ごう/健康や介護へのリスク増/「語れる場」支援を


単身・中高年男性 孤立防ごう/健康や介護へのリスク増/「語れる場」支援を 単身中高年男性の援助要請意識を高める方法の研究
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「社会的孤立」とは、家族やご近所、趣味の仲間など周囲の人々とほとんど接触がない状況をいい、健康上の重大なリスクとなる。単身の中高年男性は女性に比べ、社会的孤立に陥りやすいとされ、その予防に向けた研究が進められている。
 社会的孤立の状況にある人はそうでない人に比べ、3年後に亡くなるリスクが1・9倍、認知症となるリスクが1・6倍、要介護となるリスクが1・5倍―。
 千葉大予防医学センターの中込敦士特任准教授らは今年4月、そんな論文を発表した。全国の高齢者約3万4千人を2016年から3年間追跡した研究の結果だ。
 それによると、孤立の具体的な状況として「友人との交流が乏しい」「社会参加していない」ということが、健康に幅広く悪影響を及ぼしている可能性があるという。
 社会参加を促すイベントや介護予防の公的サービスなど孤立を防ぐ仕組みは身近にあるのに、なぜ孤立するのか。東京都健康長寿医療センター研究所の村山陽研究員らのチームはその理由を探り、対策を模索してきた。

▽諦め、不信

 まず、養護老人ホームの入所者約80人にインタビューし、孤立して生活に困っても誰かに援助を求めにくいという人が目立つことに着目した。
 次に単身の中高年者へのアンケートで、男性では経済的に苦しくなるほど将来に対する諦めと他者への不信が強まり、誰かに援助を求めにくくなるという結果を得た。
 女性では、他者への不信と問題を自ら解決しようとする意識の強まり、そして子どもの頃の生活の苦しさが、援助を求めにくくしていた。
 村山さんらはこうした結果を基に今回、女性よりも社会的孤立に陥りやすいとされる男性を対象に「将来に対する諦め」と「他者への不信」を共に軽減し、援助要請意識を高める支援方法を考え、効果を調べた。

▽安心して話せる場

 インターネットの会議システムで「講習」「語り合いの場」「メタ認知トレーニング」という計約2時間のプログラムで構成。40~60代の44人を2グループに分け一方にプログラムを3回実施し、もう一方には一度も実施しなかった。
 講習は将来への諦めの軽減が狙いで、単身中高年男性に関心の高い「仕事、健康、お金」をテーマにキャリアコンサルタントやファイナンシャルプランナーらが講演。
 語り合いの場では他者への不信感の軽減を狙い、心理士らが仲介役となり、参加者が安心して自分の経験を話せる雰囲気をつくった。メタ認知トレーニングでは、自分の考え方の癖を客観的に捉える方法を伝えた。
 その結果、この支援方法は他者への不信の軽減に有効であることを示唆する結果が得られたという。一方、将来に対する諦めの軽減には効果が見られなかった。「講習の内容が参加者のニーズに合わなかったからかもしれない」と村山さん。
 「男の料理教室など孤立予防のためのイベントはあるものの、参加しづらいという人は少なくない。そうした場に出ていくための準備段階となるよう支援の方法をさらに考えていきたい」