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AA(アルコホーリクス・アノニマス) ハル(上) 薬物依存から抜け出したが…


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 県内のリハビリ施設に通い、非合法薬物の使用から抜け出すことができ退所した。退所後は那覇市内で1人暮らしを始め、資格を取得し仕事にも就いた。パートナーにも恵まれ、その女性の子どもら3人と同居し、毎日おいしいご飯を食べ、休日は子どもたちと公園で遊び、本当に幸福な生活を送っていた。
 「薬物を断てて良かった。薬物を使わないだけで人生はこんなにも好転するんだ」。そういう気持ちで日々を過ごしていた。時々、施設や自助グループの仲間のことを思い出しては心のどこかで見下していた。「ミーティングに行かなくても、仲間と関わらなくても自分はこんなにうまくやれている。回復プログラムなんか必要ない。こうして社会に出ていけば自然としっかりできるんだ。あいつら、いつまでぐだぐだやっているつもりなんだ…」
 「薬物をやっていないんだから酒くらいたまにはいいだろう」と考えて飲んでいた。この時期の飲酒のルールは「一日のやることが終わったらパートナーと一緒に飲む」「週に1、2度飲む」だった。
 しばらくはそれができていたが、次第にがんばった自分へのご褒美としてパートナーが寝静まった後、1人で飲むようになっていった。残っていた酒を全部飲んでしまい、そのことを指摘されけんかになったこともあった。次に同じことをした時は飲んだ酒の分、同じ量の水を入れごまかすこともした。
 「俺がやってることは確かに不誠実だけど、そもそも酒くらいいいじゃないか」。自己中心的な考えになっていった。
 その後、パートナーと子どもたちと別れたが、再び独りになったその日から毎日の飲酒が始まり、たった数日でお酒の制御ができなくなった。「おかしい。非合法薬物をやめられた自分に、たかが酒くらい、やめられないはずがない。本気を出せばいつでもやめられる」。しかし、体調は日々悪くなるのに、お酒はやめられない。
 出て行ったパートナーを恨み、独りになった寂しさから逃げるため飲んだ。職場でも人間関係が少しずつ悪くなっていった。