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「再生」名刺に自分重ね 就労継続支援B型「ちぇんじ」 池永 豊彦さん


「再生」名刺に自分重ね 就労継続支援B型「ちぇんじ」 池永 豊彦さん 千羽鶴を再利用した名刺を丁寧に裁断する池永豊彦さん =11日、那覇市樋川の就労継続支援B型「ちぇんじ」
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 色とりどりの折り紙が練り込まれた1枚の名刺。再生紙の淡い色と折り紙が重なり合い、温かみを感じさせる。この名刺を一枚一枚丁寧に裁断しているのは、那覇市樋川にある就労継続支援B型「ちぇんじ」の池永豊彦さん(66)=同市。
 ちぇんじは2019年に設立された事業所で、「千羽鶴未来プロジェクト」として、県平和祈念資料館や対馬丸記念館などに寄せられた千羽鶴を再利用し、名刺を作成している。名刺のデザインから印刷、裁断、納品まで同事業所が担う。
 横浜出身で沖縄にゆかりはなかったという池永さん。20歳の頃、暴力団に所属していた。罪を犯し、刑務所への服役を繰り返した。薬物依存にもなり、千葉市内の回復施設に入所した。退所後はホテルの清掃業をしながら自立を目指したものの、体調が悪化し入院。診断は拡張型心筋症で、余命5年の宣告を受けた。「そんなものか。好き勝手やってきたからな」と感じたという。
 転機となったのは21年。知人の紹介で来県し、ちぇんじに通所するようになった。「まさか千羽鶴の名刺を作るとは想像もしていなかった」と笑う。お客さんのことを常に考え、完全商品を届けることをモットーとしている。温かみのある名刺は評判も上々で、リピーターもいるほどだ。
 代表の石澤洋平さんは「ムードメーカーで場をなごませる人。みんなから目標とされる存在でもあります」と語る。
 「沖縄に来て自分を見つめ直すきっかけができた」と池永さん。余命宣告から9年が過ぎた。千羽鶴から生まれ変わった名刺を見つめる目は、沖縄に来て生まれ変わった自分を重ねているようにも見えた。 (渡真利優人)