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「基地バブル」しわ寄せも 観光業圧迫、先行き懸念 馬毛島基地着工1年


「基地バブル」しわ寄せも 観光業圧迫、先行き懸念 馬毛島基地着工1年 馬毛島・自衛隊の滑走路予定地
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

馬毛島基地建設に従事する関係者のために設けられた仮設の宿舎=11日、鹿児島県中種子町
 鹿児島県西之表市の無人島・馬毛島で、自衛隊基地の本体工事が始まってから12日で1年となった。隣の種子島には建設関係者が集まり「基地バブル」の様相を呈している。一方、宿泊施設の不足が深刻で、ロケット打ち上げが目玉の観光業にしわ寄せがいくなど、住民の生活に影響が生じている。「工事が終わったらどうなるのか」と先行きへの懸念もくすぶる。
 港に並ぶクレーン船。空き地には工事関係者が住むコンテナ住居が乱立する。基地建設に伴い種子島の風景は一変した。
 種子島1市2町の総人口は約2万7千人。防衛省によると、工事関係者は昨年12月時点で約2800人が種子島、馬毛島で滞在している。工期は4年を見込み、今年2月以降に迎えるピーク時には約6千人となる。
 作業員の日当は3万円とも言われる。市内の70代男性は「農業などの仕事を辞めた人も多い。給料が良く、働き手が流れている」と語る。両島をつなぐ「海上タクシー」となった漁業者も多く「1日8万円が相場」(関係者)だ。
 急激な“人口増”が地元経済にインパクトをもたらしたことは間違いない。タクシー運転手の70代男性は「夜の飲食を終えた工事関係者を運び、かなり潤っている」と控えめに笑った。
 他方で、工事関係者が宿泊施設を占め、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のロケットやサーフィンを目当てとする観光客が来島しにくい状況となっている。土産物店を営む小川正さん(69)は「観光客が減り、売り上げは4割減だ」と嘆く。
 「馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会」の山内光典会長(73)は「ロケットは長期的な経済効果につながるが、基地建設の恩恵は一時だ」と指摘する。
 馬毛島では、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)が行われる。昨年11月には屋久島沖で米軍の輸送機オスプレイが墜落した。「安全は担保されていない。島に残るのはマイナス面だけではないか」と訴えた。