「今まで無視して生きてこられたのが不思議なくらい」。絵本作家のミロコマチコさんは、東京から鹿児島県の奄美大島に引っ越して初めて作った絵本「みえないりゅう」(ミシマ社)で、島で暮らすうちに日々、感じられるようになった「自然の巡り」を描いた。
小さな海で生まれた「りゅう」がさまざまに色や形を変え、波や風を起こしながら世界を回る。地球上のあらゆる生き物たちは翻弄(ほんろう)され、包まれ、導かれていく。
りゅうとは「自然そのもの」とミロコさん。島では説明のつかない現象を竜や妖怪など目に見えないものの仕業と考えるという。自分もその存在を感じたいと、海や森に目を凝らし、空や生き物を観察して「見えた気がしたもの」を繰り返し描くうちに物語が生まれた。
東京時代、自分には「生きる力がない」と不安だった。当時は生活を送ることと、絵を描くことは別物だと考えていたからだ。ただ、絵を描く時だけは本能を感じ、自分に自信が持てたという。
島に来た当初も、自然と向き合い、生活の糧を得る島民のたくましさに圧倒された。しかし「私のやりたいことと、できることは絵だから」と、集落の行事で使うTシャツを作り、ワークショップで子どもたちと触れ合ううちに絵の持つ力に気付いた。描くことで人の輪に入っていけた体験が生きる自信につながった。
魚を釣ったり野菜を作ったり、それらを交換したり。人間同士のじかのやりとりが見える島で「人は一人では生きていけない」と確信した。絵本ではそれを発展させ、地球上のあらゆるものをつなぐ「気持ちのいい循環」を描いた。「伝えたい思いは、壮大なんです」
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奄美で「自然の巡り」描く/絵本「みえないりゅう」/作者のミロコマチコさん
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琉球新報朝刊
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