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川崎病 3分の2に急減/コロナ禍でパターン変化/21・22年調査 微生物の世界変動か


川崎病 3分の2に急減/コロナ禍でパターン変化/21・22年調査 微生物の世界変動か 川崎病を発見した小児科医の故・川崎富作さん(2006年撮影)=東京都千代田区
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 川崎病は乳幼児に多い原因不明の病気だ。年間の新規患者数は2018年と19年に約1万7千人と過去最多の水準に達したのに、20年は約3分の2に急減。このほどまとまった調査結果によると、21年と22年も同じ傾向が続いた。新型コロナウイルス流行の影響ではないかという。

全身の血管に炎症

 川崎病は1967年に東京の小児科医、川崎富作さん(2020年に95歳で死去)が報告した病気で、主に4歳以下の子どもがかかり、全身の血管に炎症が起こる。
 主な症状は38度以上の高熱、両目の充血、熟したイチゴに似た舌の腫れ、発疹など。後遺症として、心臓に酸素や栄養を運ぶ冠動脈にこぶができることがあり、その場合は心筋梗塞などを防ぐため、大人になっても治療の継続や定期的な検査が必要になる。
 1970年以降、病気の実態を把握し治療に生かすための全国調査が2年に1度続けられてきた。今回まとまったのは最後となる27回目の調査結果で、2021年と22年が対象だ。

18年連続1万人超

 研究費はNPO法人日本川崎病研究センター(東京)が支援。自治医科大公衆衛生学教室が小児科のある病院1723施設に調査票を送り、1286施設が回答した。
 新規患者数は21年が1万1597人、22年が1万333人で、1万1173人だった20年と同じ傾向が続いた。1万人超えは05年から18年連続。その前に1万人を超えたのは2回だけで、増加の原因は分かっていない。4歳以下の10万人当たりの罹患(りかん)率(年間患者発生率)は21年に269・3、22年に239・9と、ピークだった19年の370・8を下回り、10年前の水準まで低下した。
 従来、患者発生には「1月に多発し、それに次ぐピークが夏に来る」という季節変動があった。ところが、新型コロナの流行した20年はパターンが崩れ、21年と22年は1月よりも8月の方が患者数は多くなっていた。

診療報酬見直しを

 こうした変化について、調査した自治医科大名誉教授で4月から宇都宮市保健所保健医療監を務める中村好一さんは「新型コロナの流行が微生物の世界に引き起こした変動を反映しているのではないか」と話す。
 患者数の季節変動などから、川崎病に何らかの感染症が関与しているとの見方は以前からあった。「21年、22年とインフルエンザの流行がなく、今年は早くから流行したこともそんな変動の一つ。微生物が川崎病に関与しているとの見方は間違いなく強まったと思う」
 今回の調査では、冠動脈病変など心臓の障害が(1)女児より男児で多い(2)0歳児で多い(3)5歳以上の年長児でやや多い―という結果だった。
 中村さんによると、0歳児で多いのは循環器系が弱いためで、年長児で多いのは診療ガイドラインが生かされていない可能性があるという。「ガイドラインでは免疫グロブリンを体重1キロ当たり2グラム投与することになっている。だが診療報酬の包括評価制度では赤字になってしまうため、まず1グラムを投与し、様子を見て1グラムを追加するという実態があるようだ。ガイドラインに沿った治療ができるよう診療報酬体系を見直すべきだ」