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物語仕立てで歩み紹介/安次嶺利美琉舞研究所/芸歴56年、芝居心も


物語仕立てで歩み紹介/安次嶺利美琉舞研究所/芸歴56年、芝居心も 「花風」を舞う安次嶺利美(左)と安次嶺正美。正美が若き日の女性を、利美が年齢を重ねた現在の姿を表現した=20日、那覇市のパレット市民劇場
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 玉城宇根本流敏風利美の会安次嶺利美琉舞研究所は20日、那覇市のパレット市民劇場で「うさぎの小さな発表会」を開催した。演目の合間に研究所の子どもたちが会主・安次嶺利美の芸歴56年の歩みを紹介し、物語仕立てで舞踊を展開した。
 同研究所の発表会は12年ぶり。師範、教師、琉球古典芸能コンクール最高賞受賞者らが中心となって出演した。公演名の「うさぎ」は利美がうさぎ年生まれであることにちなんでいる。劇団「シアターテンカンパニー」代表の田原雅之が演出した。
 利美は与那国島出身。冒頭の創作舞踊「生まり島」では島の人々の暮らしを生き生きと表現した。続いて古典舞踊や雑踊を披露し、利美が琉舞と出合い魅了される様子を描いた。
 利美は沖縄芝居も学び、県指定無形文化財「琉球歌劇」保持者に認定されている。弟子たちの中にも芝居や組踊を学ぶ者がおり、その経験が発表会で生かされていた。大城淳紀は女性ながら、組踊から抜粋した勇壮な舞踊「波平大主道行口説」に挑戦した。沖縄芝居や演劇にも出演する安次嶺正美は「海のちんぼーら」を芝居心たっぷりに踊り、会場を沸かせた。
 「花風」では利美と正美が親子で共演した。じゅりが愛する人の船出をひとり寂しく見送るというテーマだが、今回は利美が年老いた姿で登場した。しばらくすると回想シーンのように正美が若き日の姿で現れ、舞う。帰らぬ人をいつまでも思い続ける女性の人生を重層的に表現した。
 演出を工夫し観客を飽きさせない発表会だった。パンフレットに演目の解説もあるとなお良かったのではないか。 
  (伊佐尚記)