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思春期の心を知るアプリ/問題抱える子、見つける/福岡大チーム開発


思春期の心を知るアプリ/問題抱える子、見つける/福岡大チーム開発 セルフモニタリング記録の例
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 中学生や高校生など思春期の子どもたちが何を思い、何を考えているのか―。親や教師たちと距離を置きたがる時期でもあり、大人がタイミング良くアドバイスしたり助け舟を出したりするのはなかなか難しい。そのため不登校やひきこもり、うつにつながるメンタルヘルスの問題を抱えていても医療にかかるのが遅れ、こじらせることになりかねない。それならばと、若者が慣れ親しんでいるスマートフォンなどを利用して、うつの症状や希死念慮(死にたい気持ち)のあるハイリスクの子どもたちを見つけようという取り組みが始まっている。

「むぎまる」

 福岡大の永光信一郎主任教授(小児科学)らの研究チームはアプリ制作会社ライフツービッツ(東京)と共同でスマホ用アプリ「むぎまる」を開発し、2019~20年に中高生約200人を対象とした研究を実施。一定の効果がみられ、福岡市内の中高一貫校で導入されることになった。
 アプリは「レッスンパート」「モニタリングパート」の2部構成。
 第1部では「心の仕組み」を学ぶ。うれしい、楽しい、悲しいという感情が生じるにはきっかけがあり、考え方や行動を変えることで不安が消え、気持ちが楽になるといったことを学んでもらう心理教育パートだ。
 妖怪ネコのむぎまるが「感情には、良いものも悪いものもないのじゃよ」と、中学生の女子「未来」や高校生男子「ショウ」たちとやりとりをする10回分のストーリーを読み進んでもらう。24時間たたないと次の回に進めない仕組みだ。

アドバイス

 「きっかけ」「考え」「気持ち」「体」「行動」がつながっていることを学んだ上で、自分の性格の傾向を知ってもらう第2部に進む。実際に起きたことに基づいてセルフモニタリングの記録を作っていく。
 例えば「友達へのLINEが既読にならない」(きっかけ)、「嫌われてる? 無視されてる」(考え)、「不安」(気持ち)、「眠れない」(体)、「直接理由を尋ねた」(行動)という例。
 アプリは「前向きだし、積極的で良い感じ。ただし、頑張りすぎてトラブルを起こしがち? いろんな人がいるから、柔らかく考えてみたら」とアドバイスしてくれる。
 その上で、もし同じことが友達に起きたら、自分はどんなアドバイスをするかを問われる。「用事で忙しかったのかも。気にしない方がいいよ」などと書けば、別の考え方もあることに気付くことにつながるわけだ。

教育

 研究は「病院で健康診断を受ける」「健診に加えてアプリを使う」「アンケートに答えてもらう」の3グループに分けて行った。1、2、4カ月後に状態を調べたところ、健診やアプリのグループは一時的にうつが改善し、アンケートのみのグループに比べて死にたいと感じる割合が低いことが分かった。
 「親とはあまり話さないが、こんなに(医師と)しゃべれるんだと思った」「自分のことを話す機会がなかったので良かった」などの感想も。
 学校で導入する効果について永光教授は「医療と教育がつながる形ができれば、不登校などの問題にも役立つ」と期待する。ハイリスクの子どものデータを学校側に伝えるのではなく、当面は学級や学年での傾向把握にとどめるという。