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ワンネス財団 片桐 淳 返報性の原理


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 皆さんは「ペイ・フォワード 可能の王国」という映画を知っていますか。 
 少年が学校で「世界をよくするには何をすれば良いか」という課題が出されます。彼は世の中を親切で満たす方法を考えつきます。まず3人に親切にします。その3人は彼にお礼をするのではなく、別の3人にそれぞれ親切をします。親切を受け取った3人はそれぞれまた別の3人に…、と続けていくと、いずれ世界中が親切で満たされるのではないか、と考えたのです。映画では、彼から始まった親切が知らない人々まで影響を与えていく様子が描かれています。親切は、一つの行動で2人(以上)の人を幸せにできるのですから、不思議なものです。
 また、何かをもらったり親切にされたりしたら相手にお返しをしようと考えますね。心理学ではこれを「返報性の原理」と呼びます。「返報性の原理」を利用して、その思いを別の人に使っていくのです。
 ある研究で「与えてばかりいる人」「もらってばかりいる人」「その中間の人」での人生の豊かさを調査しました。その結果、「与えてばかりいる人」は最も豊かになる人がいる一方、最も貧しくなる人もいるという、二分化した結果になりました。違いは自分を大切にしているか、自己犠牲で与えているかの違いです。
 一方、「もらってばかりいる人」は、いつか信用されなくなり人が離れていくので、人生は豊かになりません。自己犠牲で与える人が近くにいればその人と依存関係になり、両方不幸になります。してもらうことが当たり前になると、次第に自分の自律性が損なわれ、何事も誰かのせいにして生きていくことになります。
 話はペイ・フォワードに戻ります。沖縄県の人口を考えると、1人が3人ずつ、たった13回親切が続けば、全県民に親切が伝わります。この読者の方の複数が同時に始めれば、もっと回数は少なくてすみます。
 まずは皆さんから。人からもらった感謝の気持ちを使って他の人に親切をする。ぜひ今日から始めてみませんか。