有料

「最後まで食べる」口腔ケアを/訪問歯科診療推進フォーラム/介護認定者の治療2.4%「多職種連携が必要」


「最後まで食べる」口腔ケアを/訪問歯科診療推進フォーラム/介護認定者の治療2.4%「多職種連携が必要」 フォーラムで訪問歯科診療の必要性や周知の課題について語る登壇者ら=1月21日、南風原町の県口腔保健医療センター
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 介護や看護の利用者が「最後まで食べる」ための支援体制を考える、訪問歯科診療推進フォーラムが1月21日、南風原町の県口腔(こうくう)保健医療センターで開かれた。歯科医師やケアマネジャー、県歯科衛生士などが「誤嚥性(ごえんせい)肺炎のコントロール」を演題にシンポジウムを開き、利用者の健康やその人らしい生き方をかなえるため、多職種連携による口腔ケアの周知に力を入れることを確認した。
 シンポジウムに先立ち、つがやす歯科こども歯科(うるま市)の牧野秀樹歯科医師が基調講演した。昨年の厚労省の中央社会保険医療協議会で示されたデータから、介護認定された高齢者の64・3%に歯科医療が必要だが、過去1年に歯科治療をしたのは2・4%にとどまったとして「どうつなげて良いか分からず放置されている」とした。
 また、高齢者や難病患者、小児の障がい児に対応する訪問歯科診療の現場を紹介。歯の形や並び、舌や唾液の機能や衛生状態を整えることが、利用者の「食べる意欲」に関係しているため、多職種連携で管理する重要性を強調した。
 シンポジウムでは、県歯科医師会会長の米須敦子氏、西崎病院の新屋洋平医師、高良歯科医院の高良孔明医師、県歯科衛生士会の吉川葵氏、合同会社hareruya代表でケアマネジャーの大城五月氏、介護施設を運営するSYMケアサポート社長の前泊秀斗氏が登壇した。
 口腔ケアは歯のブラッシングだけでなく、舌の衛生状態の維持や保湿、のみ込む機能のリハビリなど幅広く、新屋氏は高齢の入院患者に口腔ケアを実施すると誤嚥性肺炎が減少するデータを提示した。
 一方で病院や福祉施設、家庭では、知識不足などで歯ブラシ程度にとどまる現状もあるという。前泊氏は施設内で口腔ケアチームを作ったことで、利用者の口内の健康状態が改善した取り組みを紹介した。
 吉川氏や大城氏は「県内では歯科治療の優先度が低い現状がある」と指摘。大城氏はケアマネジャーの立場から、歯科医院に訪問歯科診療を依頼しても数カ月待ちや曜日が合わないケースがあるとした。米須会長らは、外来患者の対応で手一杯となる歯科医院の現状を説明しつつ、県歯科医師会のホームページに掲載している「訪問歯科診療可否名簿」の活用を案内したほか、各医療分野が開く研修会を通して周知に力を入れていくなどと語った。
  (嘉陽拓也)