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父を介護したディロング直美さん/訪問歯科「ぜひ受けて」/誤嚥性肺炎が減少 発語も食事も改善


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 大阪府で40年余り料理人として生きてきた父、大工廻(だくえ)朝順さん(享年83歳)が2020年に亡くなるまで約13年間介護してきた娘のディロング直美さん(62)。歯科診療フォーラム終盤で手を挙げると「訪問歯科診療を受けたことで父は誤嚥性(ごえんせい)肺炎も減った。好きな食べ物を味わい、発語も良くなった。同じ立場の人はぜひ受けてほしい」と体験を語った。
 古里の沖縄に戻った父は2007年に脳梗塞を発症した。看護師である直美さんは口腔ケアの重要性を認識していたため、訪問歯科診療を依頼した。
 誤嚥性肺炎を繰り返したため胃ろうの造設は避けられなかった。家族においしい食事を作ってくれた父だから「余計にかわいそうだった」という。
 ただ、医師の助言を受けたブラッシングや乾燥予防の保湿を続けていたため、父は食べ物にとろみをつけて味わうことができた。好きな物はコーヒーやチョコ。義歯を作った後はかむことをより意識するようになり、飲み込む力も良くなっていった。
 さらにうれしかったのは会話だ。朝順さんは脳梗塞後、脳血管性認知症と診断されたが、在宅介護になると時間の感覚が薄れるなどの見当識障害の軽度までに改善。寝たきりの状態でも口腔ケアによって発声や発語も聞き取りやすくなり日常会話を楽しめていたが、20年8月のお盆直前に体調が急変し、亡くなった。
 直美さんは今、自身の体験を同じ境遇の人々と語り合う「自宅家族介護のwa」を立ち上げ、情報発信を続けている。
 看護師や娘として口腔ケアを実践し続ける大切さを体験したからこそ、「訪問看護の現場などでもっと口腔ケアが浸透する仕組みができてほしい」と願った。 (嘉陽拓也)