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3日間、母に寄り添った/池田さん(与那原町)/「カジマヤーに戻った」


3日間、母に寄り添った/池田さん(与那原町)/「カジマヤーに戻った」 「エンバーミングを受けた後の母親は寝ているように自然で、顔も遺影に使ったカジマヤーの写真そのものだった。やってよかった」と語る池田正彦さん=1月13日、与那原町
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「カジマヤー(数え97歳)の頃の姿に戻り、皮膚がんがあった顔もきれいにしてもらった。まるで寝ているような母と過ごした最後の日々は家族にとって良い思い出となってます」。昨年12月に亡くなった母・池田良子さん(享年99歳)のエンバーミング(遺体保全)を「敬天」に依頼した次男・正彦さん(62)は、涙をにじませながら笑顔でそう語る。
 浦添市の学校給食調理場で働きながら子ども5人を育てた母は、36年前に夫・真正さん(享年59歳)が亡くなった後も80代まで「歩き歩き」していたという。90歳を過ぎて高齢者施設に入所後、亡くなる1年前にできた顔の皮膚がんが左目下からあごまで広がっていた。
 皮膚がんはエンゼルメークでもテープで覆うしかなく、独特なにおいもあったため「ひ孫たちに見せられるかな」と不安だった時に葬儀社からエンバーミングを提案された。
 施術は亡くなった翌日。母の顔から病気の跡やにおいが無くなると、きょうだい一同「(そのままだと)天国のお父さんが驚いたはずよー」とほっとした。
 火葬までの3日間、顔の色も変わらない母に家族が寄り添った。「皆が母の頭をなでるのでカールで整えた髪がつぶれてね。毎日、施術をした當眞嗣音さんが整えてくれた」と正彦さん。
 県内ではエンバーミングの認知度は低いが、正彦さんらきょうだいは「私たちは思い出に残る良い時間ができたのでやって良かった」と語った。(嘉陽拓也)