信じられない、許せない!と、世界の中心で叫んだとしても、何も変わらないのがあの国で、だからこそ、新たな悲しみが日々生まれている。
危険を冒して脱北を試みるか。心を殺し、思考をやめてでも祖国に骨を埋めるべきか。少ない選択肢の中から脱北の道を選んだ家族に密着したこのドキュメンタリーが映し出すのは、北朝鮮に生まれた人々の現実。逃げて生き延びて、成功して良かったね、というような単純な娯楽映画ではない。脱北に成功した人々の背後には多くの命の犠牲があり、脱北の道を選ばずに苦しんでいる家族や友の存在が、彼らの心を苦しめない日はない。
国民が政治への疑問を抱かぬよう、彼らの将軍さまは圧政を敷く。疑わしくは罰し、見せしめにも罰する。その姿はまるで、おびえる子犬のよう。できることなら抱きしめて、怖くないよと教えてあげたい。心を開き、国を開き、未来を開きましょうと、背中をなで、耳元で優しくささやいてあげたい。監督はマドレーヌ・ギャヴィン。(桜坂劇場・下地久美子)
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北朝鮮の人々の現実 ビヨンド・ユートピア 脱北 桜坂劇場・公開中
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琉球新報朝刊
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