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一歩ずつ歩み出す2人 夜明けのすべて シネマQとシネマライカムで公開中


一歩ずつ歩み出す2人 夜明けのすべて シネマQとシネマライカムで公開中
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 何ともふんわりしたタイトルだが、若い男女の恋愛の話かと思えばさにあらず。
 パニック障害を患う山添君と、PMS(月経前症候群)で生理の前後だけ極度のイライラを抑えられなくなる藤沢さんが、生きづらさを抱えながらも支え合い自身の生き方を見つけていくお話。
 ふたりとも“普通”というカテゴリーの中に入れられてしまったら、協調性がないだの空気が読めないなど、変人扱いされかねない。コントロールできない感情のありように振り回されては自己嫌悪に陥るのだが、症状を改善する近道は無い。
 そんな2人が見つけたのは、客観性をもって見られる他者への寄り添い方。若い男女が隣り合えば、すぐに恋愛に結び付けたがる自分もまた“普通は”に侵されたひとりなのだろう。誰にだって恋愛より大事にしたいものがあって当然で、一歩ずつ歩み出す2人をずっと見ていたくてたまらなくなる。演じる松村北斗と上白石萌音の存在が素晴らしい。監督は三宅唱。(スターシアターズ・榮慶子)