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演劇活動で老いを楽しむ


演劇活動で老いを楽しむ 岡山組の舞台「老人ハイスクール」の稽古=岡山市の岡山芸術創造劇場
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 シニア世代が演じる、老いをテーマにした舞台「老人ハイスクール」と「いざゆかん」が3月、岡山芸術創造劇場(岡山市)と三重県文化会館(津市)で上演される。キャストのほとんどは両県の市民たち。関係者は「実践を重ねて、高齢者の演劇活動が広まっていったらいい」と期待する。

シニアの市民が舞台上演
 1月、岡山の劇場稽古場に、キャストが集った。出演者39人のうち、65歳以上が約6割を占める。「せりふ、何とか覚えられてOKじゃないですか」と、演出家に励まされる男性。若いスタッフから耳元でせりふをささやかれながら、稽古をする人もいるが、周囲は温かいまなざしで見守る。
 舞台は岡山と三重、両ホールの共同制作。三重県文化会館は2018年に「老いを楽しむ」視点で事業を展開する「老いのプレーパーク(老いプレ)」を立ち上げ、岡山県の劇団「『老いと演劇』OiBokkeShi」を主宰する菅原直樹さん(40)の指導で毎年、公募市民による演劇を上演してきた。
 昨秋開館の岡山芸術創造劇場も「老いプレ」を始動し、今回の“タッグ”が実現した。同劇場のプロデューサー渡辺弘さん(71)は、かつて彩の国さいたま芸術劇場(さいたま市)で演出家の蜷川幸雄さんが創設した高齢者劇団「さいたまゴールド・シアター」を担当しており、岡山でも「老いプレ」を事業の柱にしたい意向だ。
 舞台の作・演出は菅原さんが手がける。“岡山組”の「老人ハイスクール」は、老人ホームを学校に見立てた群像劇で、“三重組”が上演する「いざゆかん」は、同居することになった息子とその妻がヒーローと悪党だったという設定のアクションアドベンチャーだ。
 出演者の一人、岡山市の赤田貞治さん(66)は演劇初心者。長年会社勤めをしてきたため「やっと余裕ができたので挑戦したいと思った」という。「芝居で他の人になれるのも、感情をぶつけられるのも面白い」
 18年から演劇に取り組む、津市の井早照彦さん(79)は「気持ちが若くなった。せりふを覚えるのは大変だけれど、皆で息を合わせてやるのは楽しい」と笑顔を見せる。
 三重県文化会館副館長の松浦茂之さん(55)は「70、80歳で緊張しながら舞台に立つのは、いい生きがいづくりになる」と話し、渡辺さんは「(舞台が)お客さん自身の生活と結び付くところがたくさんある。お互い励ましたり、励まされたりするものを作っている」と意義を強調する。