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治療できる過活動ぼうこう 患者1千万人超 受診2割にとどまる 尿意切迫感+頻尿、「ためらわず相談を」


治療できる過活動ぼうこう 患者1千万人超 受診2割にとどまる 尿意切迫感+頻尿、「ためらわず相談を」 仙骨神経刺激療法の仕組み
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日本では中年以降の1千万人以上が患っているとされる過活動ぼうこう(OAB)。頻尿や失禁を伴うため、羞恥心や自尊心もあって医師にかかるのは約2割にとどまる。専門医は「治療で快適な暮らしを取り戻せる」と受診を勧めている。

つらい検査なし
 OABは尿が十分たまっていないのに、ぼうこうが勝手に収縮、排尿しようとする病気。診断基準は、週に1回以上の突然起きる我慢できないほどの「尿意切迫感」に「頻尿」が加わること。頻尿は排尿が日に8回以上あるか、就寝中に1回以上、トイレで起きる「夜間頻尿」を言う。
 加齢で起きるが「糖尿病や肥満、高血圧などの生活習慣病とリンクするし、前立腺肥大の男性の半分はOABもある」と日本大板橋病院院長の高橋悟教授(泌尿器科)。
 昔は診断の際、尿道に通した管からぼうこうに水を入れ、どこまで耐えられるか調べる尿流動態検査も行ったが、今は検尿と超音波検査で残尿や細菌感染、結石、がんなどの他の疾患の有無を調べるだけ。「つらい検査はしないので、気軽に受診を」と高橋さん。

まずは行動療法
 治療法は多い。まずは自分でできる行動療法。水分を控え、運動をして、夜間頻尿なら塩分を控えるなどの生活習慣の見直し。骨盤底筋を鍛える体操や排尿間隔を少しずつ広げるぼうこう訓練もある。肥満女性では減量で改善することも。
 次いで薬物療法。ぼうこうの緊張を緩める抗コリン薬やβ3受容体作動薬を使う。前者は排尿時のぼうこう収縮も抑えるため、排尿障害がある場合は注意が必要。
 これらの治療を3カ月以上続けても十分な効果が得られない場合は難治性と診断される。高橋さんは「はっきりしたデータはないが、患者の1~2割が該当すると感じる」と印象を語る。

難治性にも効果
 難治性への治療はまずボトックス。ボツリヌス菌の毒素を内視鏡でぼうこう内壁の20カ所程度に注射する。眼瞼(がんけん)けいれんの治療や美容整形で顔のしわ取りにも使われるが、筋肉の異常な緊張を取ってくれる。効果は8カ月程度は続き、治療を繰り返すことも可能。
 さらにペースメーカーのような小型デバイスを臀部(でんぶ)に埋め込み、排せつに関わる神経に周期的な電気刺激を与えて頻尿を抑える仙骨神経刺激療法もある。日本では2014年に便失禁治療、次いで17年に過活動ぼうこう治療で保険適用された。メーカーによると、既に世界で約40万人が使っている。
 装置の小型化も進み、スマホのように外から充電できるようになった。以前は難しかった装着者の全身MRI検査に対応できる機種も登場した。
 それでも十分な効果が得られない場合、腸管を使ってぼうこうを拡大する手術もあるが、高橋さんは「仙骨神経刺激まで使えば、かなりの人を満足できる状態に持っていける」と自信を見せる。
 命の危険はないが、生活の質を大きく損なうOAB。外出先での失禁を恐れて引きこもる人も多い。高橋さんは「平均寿命が延びて、不便を強いられる期間も延びた。治療できる病気なので、ためらわずに泌尿器科医に相談を」と訴えている。