冷戦時代、ソ連占領下のエストニアで、パイロット将校と若い二等兵の恋は燃えていた。同性愛が固く禁じられた環境下で、秘密裏に愛を育む2人の鼓動は極めて激しかったに違いない。気のないそぶりをしていても、気づけば目線は彼を追いかけ、忘れようとすればするほど思いはつのり、人目を避けて抱き合えた瞬間、幸せが爆発する。スリルと緊張のドキドキが恋の鼓動と重なり、燃え上がる炎となり、身を焼き尽くす。悲しく美しい恋の実話。
話は変わるが、先日酒にのまれた際、キスがしたいと叫んでいたらしい。記憶はないが、あり得なくはない。キスについてはよく考えている。それにしても、酒に溺れて恥ずかしい本音をこぼした事実を知らされても、いっさい鼓動が乱れないこの状況が憎い。そういえば最近緊張もしていない。心臓が半分止まっているみたいだ。
燃え上がる恋をうらやみながらも、冷静な鼓動を続ける心臓。これも一つの悲しい恋の実話。監督はペーテル・レバネ。(桜坂劇場・下地久美子)