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日本フィル・落合陽一「帰納する音楽会」 人×AI 一期一会の表現 音色に反応し描画


日本フィル・落合陽一「帰納する音楽会」 人×AI 一期一会の表現 音色に反応し描画 プレトークで語り合う落合陽一(右)と茂木仁史
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日本フィルハーモニー交響楽団とメディアアーティストの落合陽一による「帰納する音楽会」の室内楽によるサテライト公演が2月24日、那覇市の琉球新報ホールで開かれた。昨年11月から全国3都市で開かれ、最終地を沖縄で迎えた。琉球古典音楽「揚作田節(あぎつぃくてんぶし)」と西洋楽器が共演する「Open Leaves(オープンリーブス)」(作曲・藤倉大)を、琉球古典音楽奏者と日本フィル弦楽四重奏団、琉球交響楽団の弦楽奏者が共演し、一期一会ともいえる旋律を奏でた。
 冒頭から中盤にかけ、バイオリンとビオラ、チェロの弦楽奏者8人が「オープンスコア」というスタイルで書かれた楽譜を基に演奏した。指定された音階のうち、好きな奏法を選択して演奏するなどして、比較的自由度の高い演奏になるという。後半に差しかかると、歌三線、箏、笛、胡弓、太鼓の琉球古典音楽奏者6人が古典音楽「揚作田節」を原曲本来のまま演奏した。厚みを増した悠久の音色を響かせ調和した。
 落合が音楽会の映像演出を担い、舞台上のスクリーンには、演奏される音を基に人工知能(AI)に映像を作らせ、演奏と同時に流す演出も楽しませた。AIが動画を制作する素材として、昨年、落合が沖縄でのフィールドワークで撮影した「御嶽」や「お墓」などの画像をインプットし、その場で演奏される音に反応してAIが描画するという仕組み。音色それぞれで表現も変わり、一期一会のはかなさも感じさせた。公演前に国立劇場おきなわの茂木仁史と落合が登壇し、オペレーターとAIの関係、楽曲の解説などがあった。
 音楽会ではこのほか、琉球古典音楽の斉唱「かぎやで風節」や独唱「仲風節」、ドボルザーク作曲の「弦楽四重奏曲第12番『アメリカ』」なども演奏した。
 2018年から日本フィルハーモニー交響楽団と落合が継続開催しているプロジェクトの第7弾の一環。同23日には首里城世誇殿(よほこりでん)でも催された。 (田中芳)