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「魔笛」に沖縄の息吹 照屋勇賢、舞台化へ始動


「魔笛」に沖縄の息吹 照屋勇賢、舞台化へ始動 沖縄復帰50年特別企画として那覇文化芸術劇場なはーとで展示された照屋勇賢さんの作品展「CHORUS(コーラス)」=2022年5月、那覇市久茂地(ジャン松元撮影)
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 モーツァルトが生涯の最後に完成させたオペラ「魔笛」と、県出身美術家・照屋勇賢(ゆうけん)の表現などを掛け合わせたプロジェクトが始まっている。那覇文化芸術劇場なはーとが企画制作し、2025年1月の舞台上演を目指す。1月24~28日には関係者によるワークショップをなはーとで開催し、どのような音や身体表現を取り入れられるのかや、クラシック音楽や琉球古典音楽、組踊の唱えなどの掛け合わせを試みた。
 照屋は22年5月、やんばるの森をコンセプトとする展覧会「CHORUS(コーラス)」をなはーとで開催した。作品は、木製パレット(荷台)を積み上げて木を描いている。この作品制作過程より、照屋は魔笛の序曲を連想したことが、舞台化プロジェクトのきっかけになったと振り返った。登場人物や物語に沖縄の歴史、個人的な記憶、やんばるの森を重ね合わせるという。「魔笛」プロジェクトで照屋は舞台の総合演出と、舞台美術を担当する。1月のワークショップでは、照屋と音楽家の小野龍一、古典企画の仲村逸夫らが意見を交わした。
 オペラ「魔笛」は魔法の笛に導かれた王子・タミーノが、数々の試練を乗り越えて夜の女王の娘・パミーナと結ばれる。夜の世界を支配する女王が昼の世界を支配するザラストロに倒されるといったファンタジーの要素も含まれる。オペレッタやミュージカルの原点とも言われ、世界で人気の高い作品の一つ。
 照屋は「モーツァルトや(台本を手がけた)シカネーダーが生きた当時の社会背景を分析し、『魔笛』の解釈を残しつつ、同時に沖縄の本質的なものやエッセンスを抽出したい」と意気込む。「『魔笛』に乗せることで沖縄を発信するチャンスが生まれる。それをゴールとして、取り組みたい」と語った。 (田中芳)