少年は絶望の淵にいた。暴力にまみれた父に優しい心を踏みにじられ、折れてしまった心を犬たちのぬくもりでつなぎ留めていた。犬たちだけが彼の心に寄り添い、真っすぐ向き合ってくれる。そしていつしか、犬の軍団を束ねるダークヒーロー・ドッグマンが誕生し、ひそかに悪者退治をはじめる。
ドッグマンの繰り出す課題、例えば、ケーキ作りをサポートしたり、盗みを働いたり、悪者の股間を食いちぎったり。どんな瞬間でも、常に真っすぐでクリクリした犬たちの瞳は、愛されている犬特有のけなげさと好奇心で輝き、愛くるしいことこの上ない。
「人間はね、犬といる方が人といるよりも癒やされるんだって。有名な哲学者が言ってたのよ」と、犬3匹と暮らす妙齢の女性が言った。ドッグマンと、彼と共に生きる犬たちが「ほらね」とでも言いたげに、癒やし効果を見せつけてくる。確かにキュンキュンする。でもやっぱり、分厚い胸板に抱きしめられる時の特有の癒やしを、私は諦められない。監督はリュック・ベッソン。
(桜坂劇場・下地久美子)
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犬軍団束ねるヒーロー ドッグマン 桜坂劇場・公開中
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琉球新報朝刊
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