パリの空気　沖縄で奏でる　下里豪志　ピアノソロリサイタル　なはーと　名曲　優美に力強く

　フランス・パリを拠点に活動するピアニスト・下里豪志（たけし）＝南風原町出身＝のソロリサイタル「語り継がれる華麗なる名曲の調べ」が２月１８日、那覇文化芸術劇場なはーと大劇場で開かれた。ベートーベンやリスト、ハイドンなど、日頃研さんを重ねている名曲を演奏した。地元沖縄でのリサイタルに音楽ファンら多くの観客が駆けつけ、下里の奏でる優美で力強い音色に聞き入った。
　開邦高、上野学園大を経て２０１７年にイタリアへ渡り、現在はパリを拠点に欧州で演奏会を重ねる。曲目は「いつか共有したい」と、以前から温めてきた楽曲だという。
　前半はロシアを代表する作曲家、スクリャービンの「２つの詩曲」と、ベートーベンのピアノソナタ「熱情」を演奏した。下里は人生を語るように迫力に満ち、淡く繊細で、多彩に奏でて引き込んだ。
　演奏の間にＭＣで作曲家への思いも語った。スクリャービンを演奏する時は「魂が抜け切れていない、宇宙に生まれようとする、ナーバスで繊細な音色」を、ベートーベンの作品からは「生きることへのエネルギー、人間の強さを感じる」とそれぞれ振り返った。
　後半は急きょ演奏曲目を一部変更し、欧州でも演奏しているハイドンのソナタを１曲目に披露した。「パリの空気をそのまま沖縄に持って帰って演奏したかった」と、ドビュッシーの「月の光」も披露した。ショパンの作品から「子犬のワルツ」「幻想即興曲」を、リストの「愛の夢　第３番」「ラ・カンパネラ」などを奏でて観客を魅了した。
　下里は「いろんな場所で演奏しているが、沖縄で演奏するのは一番緊張する。それは一音でも良い音を奏でたいからだ」と語り、拍手喝采を浴びた。アンコールに「童神」を演奏し、音楽とトークで観客と心を通わせる時間となった。主催は下里豪志ピアノリサイタル実行委員会、特別協賛は日本トランスオーシャン航空。　（田中芳）