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コット、はじまりの夏 シネマパレット・上映中 9歳少女の成長物語


コット、はじまりの夏 シネマパレット・上映中 9歳少女の成長物語
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 なんと、優しい映画だろう。家庭にも学校にも居場所を失くした9歳の少女の、ひと夏の物語。
 出産を控えたコットの両親は、手のかかるコットを夏休みの間、親戚の牧場へ預けることにする。コットはここで無条件の愛情を注がれ、次第に自分の感情を取り戻していく。
 実の母親とてコットが疎ましいわけではない。子だくさんなのに亭主は働かないし、コットはおねしょが治らないしで少しの余裕も彼女にはない。毎日の生活が大変すぎて、コットの繊細な感情のありように気がつかないのだ。
 それでも、コットが初めて味わう、つないだ手の温かさやそっと手渡されるお菓子の甘さは、両親から欲しかったことだろう。
 牧場でのびのびと風を切って走るコットに、誰もがそのまま幸せであってほしいと願わずにはいられない。コットのこれからを想像しては、彼女が一番幸せでいられる方法を勝手に模索している。監督はコルム・バレード。(スターシアターズ・榮慶子)