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台本に忠実に向き合う 翻訳の林、構成・演出の新井


台本に忠実に向き合う 翻訳の林、構成・演出の新井 新井章仁
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 那覇文化芸術劇場なはーとが始動した「ブレヒト×沖縄芝居新作プロジェクト」。企画の狙いや、2月のリーディング試演会の台本や演出について、なはーとの土屋わかこプロデューサー、翻訳を手がけたなはーとの林(はやし)立騎(たつき)、上演台本の構成と演出を担当した劇団ビーチロックの新井章仁に聞いた。
 企画を提案した土屋は「今の時代の魅力的な実演家が生み出す新作を見たいと思った」と振り返る。「(作品の)登場人物は今の社会にもいっぱいいる。自分がどう生きるか考えるきっかけになれば」と期待を込めた。
 企画のカギになったのがドイツの劇場で働いた経験がある翻訳者の林だ。「ゼチュアンの善人」の日本語訳はすでにあったが、1960年代以降の翻訳は共産主義が理想の一つとされた風潮からか、階級や性別を意識した語り方になっていたという。林は「原文の方がシンプルで現代にも通じる言葉だった。今を生きるさまざまな人の立場を意識した」と話す。
 翻訳から台本に手がけた新井も、その言葉のシンプルさが印象に残ったという。その上で「ブレヒトは詩人だったので、詩的な文章が残るよう言葉や表現を大事にした。今回の上演がゴールではない。原文のままでお渡ししようと心がけた」と語った。試演会は、演者が実際に身ぶりも含めて演技するなど、ほぼ通常の芝居に近い状態だったが、台本を持ちながらの演技にこだわった。「人と人との関わりを大事にしつつ、台本の言葉に忠実に向き合ってほしかった」とその意図を語った。