ビクトル・エリセ監督の31年ぶりの長編だという。監督83歳。誰もが待ち望んだ新作は愛にあふれていた。描かれるのは、映画の撮影中に突然蒸発した俳優と映画監督のその後の人生。
未完成となった映画と親友を同時に失い、監督業さえも手放してしまったミゲル。ある時未完の映画をめぐるテレビ番組に出演したことから、蒸発した俳優フリオに似た男の消息を知る。なぜ突然にフリオはいなくなってしまったのか。もう1人の親友は言うのだ。酒や女におぼれてもフリオが逃げ切れなかったのは「老い」だと。
22年の月日を経て2人の男は再会する。「老い」を受け入れ、自然に生きようと諦念にも似た心境で暮らすミゲルが、自分が誰かさえ忘れてしまったフリオとベンチで語らう様に、2人のこれまでとこれからが交差する。
ラストシーンに込められた、エリセ監督の映画への思いとぬくもりに涙する。老いて失うものも多いが、得られる豊かさは老いてみないと分からない。(スターシアターズ・榮慶子)
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逃げ切れなかった「老い」 瞳をとじて シネマパレット・公開中
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琉球新報朝刊
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