高校卒業が近づいたある日、同級生が自衛隊に行くと聞いて驚いた。当時から、将来の展望も夢もなく、快楽を追求して生きていた故、快楽を禁じられて生きる道を、自ら選ぶ人がいるなんて信じられなかった。見送りの日、私なりに最大限の気遣いで贈った言葉が「戦争になったら逃げてね」。彼らは笑って「わかった」と言った。なんてことを、この映画を見ながら思い出していた。
本作は、宮古・八重山に着々とミサイル基地や弾薬庫、訓練場が建設される様子を、島に暮らす人々の暮らしと共に映す。豊かな自然と伝統文化を受け継ぎ、穏やかに生きる島の人々の生活に「有事」「国防」といった、硬い言葉が飛び交い、有事の際の島民の避難訓練まで行われる。
明日にでも戦争が始まるかのような物々しさ。戦争になれば最前線になる島で、逃げ出すはずのない屈強な自衛隊員たちに同級生の顔が重なる。なんでこうなった? 戦闘機と並走する与那国馬の画が、混乱をさらに深くする。監督は三上智恵。(桜坂劇場・下地久美子)
有料
島の人々の暮らしと混乱 戦雲(いくさふむ) 桜坂劇場・あすから
![島の人々の暮らしと混乱 戦雲(いくさふむ) 桜坂劇場・あすから](https://ryukyushimpo.jp/tachyon/2024/03/RS20240320G00831010100-scaled.jpg?resize=615%2C410&crop_strategy=smart)
この記事を書いた人
琉球新報朝刊
![Avatar photo](https://ryukyushimpo.jp/uploads/2023/09/favicon-21x21.png)