小さくて何気ない映画、ではなかった。映画を通し、17歳の多感な少年が過ごす極めてパーソナルな時を、一緒に生きる体験をした。フランスの美しい景色の中で展開される、とても静かな映像を前に、頭は17歳の頃のように忙しく動き、心は傷だらけ。でもその感覚が、鑑賞後もずっと心地良い。
17歳のある日、リュカは大好きだった父親を突然亡くした。大きすぎる喪失感に打ち勝つべく、大都会パリへ行ってみたり、アバンチュールしてみたり、いけないことに手を出してみたり。果敢に人生に挑むけれど、結果は常に返り討ち。
ただし映画は、そんな彼の行動を「若いな」と客観視することも、傷つく姿から目をそらすことも許さない。ただひたすら、美しい傷だらけの少年と共に、不安定な時を生きる。何をするか見当もつかない、危うい少年を見つめた時間は懐かしく、至福の時だった。リュカ役のポール・キルシェ、素晴らしい役者さんでした。監督はクリストフ・オノレ。(桜坂劇場・下地久美子)
有料
17歳 共に生きる体験 Winter boy 桜坂劇場・あす公開
![17歳 共に生きる体験 Winter boy 桜坂劇場・あす公開](https://ryukyushimpo.jp/tachyon/2024/03/RS20240327G00050010100.jpg?resize=615%2C360&crop_strategy=smart)
この記事を書いた人
琉球新報朝刊
![Avatar photo](https://ryukyushimpo.jp/uploads/2023/09/favicon-21x21.png)