描かれるのは、かつては愛し合ったはずの夫婦を引き裂く歯車のきしみ。気が付けば夫婦げんかの毎日。相手の言葉尻をとらえて優位に立とうとする歪(いびつ)さに気づきながらどうしようもないふたり。その夫が不審死を遂げ、妻は容疑者に。目撃者は視覚障害のある11歳の息子のみ。
無実を訴える妻の「私はやっていない」に答える弁護士の「それは関係ない!」に戦慄(せんりつ)する。殺人の有無ではなくどうやって無実を勝ち取るかだけが語られる。
次々とさらされる夫婦間のあつれきや過去。なるほど、容疑者となった妻にプライバシーなどないのだと震えるのだが、どうしても妻の味方をしたい私。だが、ある場面から夫の心情に寄り添いたくなり、けなげな息子の心中に思いをはせては苦しくなる。
ヒリヒリするような攻防戦が続き、これは殺人か事故か自殺かを解き明かすミステリーではないのだと気づく頃、のどは渇ききっていた。ご夫婦で一緒にご覧になるかは、あなた次第。監督はジュスティーヌ・トリエ。(スターシアターズ・榮慶子)
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落下の解剖学 シネマパレット・公開中 夫の不審死巡る攻防
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琉球新報朝刊
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