<金口木舌>戦争孤児を救った教師


<金口木舌>戦争孤児を救った教師
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 沖縄戦中、石垣島の山中で避難生活を送っていた男性はマラリアで母親を亡くした。8年前に取材した時は80歳。最愛の母を一人で埋葬したことを涙ながらに話してくれた

▼孤児となった男性は網元をしていた親戚に引き取られ、毎日潜って貝や海藻を取った。厳しいノルマに苦しんだという。「船に上がると肺が破裂しそうになって、血を吐いたこともある」
▼過酷な日々を送っていた男性を救ったのは地元中学校の校長だった。「義務教育が始まった。学校に行かせるように」と網元を説得し、男性は学校に通えることになった
▼日本本土から遅れること2年、1949年4月に八重山民政府が施行した教育基本法や学校教育法が通学の根拠だった。日本の法令を踏襲し、独自の法令をまとめた。教育再興の息吹を感じさせる
▼「あの先生がいなかったら、人生は変わっていただろう」と男性は語っていた。戦争体験が遠のき「新たな戦前」と呼ばれるような時代の中で、子どもの学びを守った教育者の行動は輝きを増している。見つめ直すべき時だ。