クルド人スターの人生　ＲＨＥＩＮＧＯＬＤ　ラインゴールド　桜坂劇場・公開中

クルド人で音楽家の両親の元、イスラム革命の戦火の中で生まれた主人公・カターは、なんとか戦火を逃れ、ドイツに流れついた。実在し、今もドイツで活躍するミュージシャン、カターの半生は、そこからさらに怒涛（どとう）の展開を見せ、金塊泥棒として収監されるまでに転落する。でも、不思議と転落しているように見えないのはスターたるゆえんか。はたまた監督の手腕か。聞き齧（かじ）ったラップ、音楽家の両親の血、ＤＮＡに刻まれたクルド音楽の旋律。悪童という一面を除けば、純粋な、音楽愛あふれる青年だったカターは、心機一転、刑務所の中からミュージシャンとして新たな人生を歩みはじめる。
心奪われるのは、カターの母親譲りの生命力。イスラム革命の中、楽器を銃に持ち替え、誇り高きクルド人兵士となった母は、身重の体で爆撃の中を生き延び、一人でカターを出産した。魅力あふれるカターの人生は、彼の母の生きざまをも映し出し、黄金に輝く。監督はファティ・アキン。
（桜坂劇場・下地久美子）