ラブコメに潤いもらう　恋するプリテンダー　シネマライカム・公開中

　淡い恋の始まりなんて、遠いこと過ぎて思い出せない。それでも、映画のように「困っていた女性を機知にとんだセリフで助ける」なんて芸当に出合ったことはないが、そりゃ恋にも落ちるだろうと激しくうなずいてしまう。
　だが、困ったことに遊びなれた男性はすなわち誰が困っていても助けてくれる。その度に恋に落ちる女性を増やしていてはロマンチックどころか修羅場だ。などと、役にも立たない老婆心で、「その男はやめておけ」とスクリーンの向こうのかわいい女の子に声をかけてしまっている自分を笑う。
　長続きしないと分かっている恋に年寄りは厳しいのだ。だから映画の中の両親も手堅い元カレとの復縁を策略しては嫌われる。
　何が幸せかなんて誰にも分からない。永遠なんてないのであれば、たとえ短くても愛を感じられる関係の方がいいということか。笑いながら、あきれながら、久しぶりのラブコメに優しさと潤いをもらう。監督はウィル・グラック。（スターシアターズ・榮慶子）