日中韓　ＦＴＡ交渉加速　４年半ぶり首脳会談　３カ国協力推進

　【ソウル共同＝鳥成慎太郎】岸田文雄首相、中国の李強首相、韓国の尹錫悦（ユンソンニョル）大統領は２７日（日本時間同）、韓国・ソウルで３カ国首脳会談に臨んだ。地域の平和と繁栄に大きな責任を持つ３カ国が幅広い分野で協力を進める決意を共有。２０１９年を最後に中断している日中韓自由貿易協定（ＦＴＡ）締結交渉の加速で一致した。日中韓首脳会談の開催は１９年１２月以来、約４年半ぶり。　（３面に関連）
　３首脳は共同宣言を発表した。首脳会談と閣僚級会合を定期的に開催することで３カ国協力の「制度化」に努めると明記。北朝鮮を巡っては、前回の首脳会談成果文書で「完全な非核化にコミット（関与）している」とした記述が消え、後退した。
　安全保障や経済分野で日韓と中国の間に立場の違いがある中、３カ国協力を通じて東アジア地域の安定を図る意志を明確にした。首脳会談の定例化を実現できるかどうかが焦点となり、次回議長国を務める日本の手腕が問われそうだ。
　共同宣言では、ＦＴＡを巡り「自由で公正な質の高い日中韓ＦＴＡの実現に向け、交渉を加速するための議論を続ける」と記載した。岸田首相は会談で「ハイレベルな規律を含め、未来志向のＦＴＡの在り方について意見交換していきたい」と述べた。
　共同宣言は朝鮮半島を巡り「政治的解決のために引き続き前向きに努力することに合意する」と強調。非核化と拉致問題に関しては「それぞれ立場を強調した」とのみ記した。関係者は「北朝鮮に近い中国の意向が反映された」と指摘した。
　岸田首相は共同記者発表で「北朝鮮の非核化と朝鮮半島の安定が日中韓の共通利益であると改めて確認した」と説明した。日本人拉致問題の即時解決に向けた支援を求めた。