有料

国際問題に挑む母の愛 ミセス・クルナスvs. ジョージ・W・ブッシュ 桜坂劇場・あすから


国際問題に挑む母の愛 ミセス・クルナスvs. ジョージ・W・ブッシュ 桜坂劇場・あすから 【芸能】シネマFOCUS/桜坂劇場/ミセス・クルナスVSジョージ・W・ブッシュ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 ドイツ在住、ちょっと過保護気味の陽気な専業主婦クルナス夫人は、9・11のテロ直後、内緒で旅に出た破天荒な19歳の息子を連れ戻したいと必死だった。しかし不運なことに息子は、タリバンの容疑をかけられ、グアンタナモの収容所へ送られたことが発覚。二度と息子に会えないかもしれない。単純な母の心配が、国際問題に変わった。
 ドイツ政府とアメリカ政府、国際情勢とか、法律とか、メンツとか。乙女心くらい複雑で入り組んだシステムを前に、シンプルな母の懇願が空を切る。やっと出会えた心強い味方、弁護士のベルンハルトに戦略を委ね、クルナス夫人は引き続き、ただシンプルに「息子を返して」と泣き、心ある人の協力に感謝し、家族を愛し、弱っている人に手を差し伸べる。そそっかしくて自分勝手で愛情深い。「待つと希望は死にます」と、アメリカに乗り込むのも母の強さ。切実で複雑な世情を、シンプルな愛の問題として投げかけた、笑って泣ける物語。監督はアンドレアス・ドレーゼン。(桜坂劇場・下地久美子)