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国指示権拡大 衆院通過 自治法改正案 分権逆行、乱用懸念


国指示権拡大 衆院通過 自治法改正案 分権逆行、乱用懸念 地方自治法改正案の主な論点
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 大規模な災害や感染症の流行など、想定外の事態に国が自治体に対応を指示できるようにする地方自治法改正案は30日の衆院本会議で可決、通過した。自民、公明、日本維新の会、国民民主各党などの賛成多数。非常時に国主導による迅速な対応を可能にする狙い。指示が適切だったかどうか検証するため国会への事後報告を義務付ける修正を加えた。立憲民主党、共産党、れいわ新選組は「時の内閣の恣意(しい)的な判断で指示できる」などと改正案に反対した。 (3面に関連)
 国と地方の関係を「対等・協力」と定めた地方分権の原則は維持し、指示権は特例として位置付ける。行使の際は、全閣僚の同意が必要な閣議決定を経る。ただ分権の流れに逆行するとの批判や想定外の要件があいまいとの指摘があり、参院審議での焦点となる。
 採決前の討論で、維新の中嶋秀樹氏は指示権について「多様化する危機対応に必要」と支持を表明。立民の吉川元氏は「想定していない事態に国がすべきなのは、自治体の声を聞き必要な支援を行うことだ」と訴え、共産の宮本岳志氏は「憲法で保障された地方自治を根底から破壊する」と主張した。
 国の指示権は現状、災害対策基本法や感染症法など、個別の法律に規定がある場合に行使できる。改正案は「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」であれば、個別法に規定がなくても国が自治体に対策を指示できる。
 政府はコロナ禍での行政の混乱を踏まえ、国が迅速な対応をとれるようにすると説明。指示権行使の可能性がある具体的な場面は「個別法では想定されていない事態」(松本剛明総務相)と明らかにしていない。
 改正案は、指示権行使に当たり自治体の意見を求めることを努力義務としている。立民などは、乱用への歯止めとして自治体との事前協議の義務付けを要求したが松本氏は「事態が多様かつ複雑で、特定の手続きを必ずとるのは難しい」とした。