日本のこの風景、日本人のこのわびさび、なぜ日本人監督が撮れなかったのか。僕は悔しい!とある映画関係者がおっしゃっていた。
莫大(ばくだい)な予算をかけたわけでもなく、何げない風景を切り取った中に、さりげなく日本の歴史や情緒を織り交ぜ、サラッとした脱力感すら感じさせる作品で、各映画賞を総なめにしたヴィム・ヴェンダース監督。確かに日本の映画監督たちは悔しいかもしれない。一方で私は、役所広司さん演じるトイレの清掃員・平山の暮らしに「憧れる」と、堂々と言えてしまう若い男性陣に「ちょっと待ってくれ」と言いたい。
思い返せば「悔しい!」とおっしゃったのは、仁義に熱く礼を重んじる昭和生まれの熱血漢。「悔しい」の向こう側に、次は俺だって!という気骨が見える。
まだまだ働き盛りの若い衆が、初老男性の質素な隠居生活に憧れるなんて。劇中、石川さゆりさんの歌った「朝日のあたる家」の一節「こんなになったらおしまいだってね」がリフレインする。(桜坂劇場・下地久美子)
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PERFECT DAYS 桜坂劇場・あすから 何げない風景と脱力感
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琉球新報朝刊
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