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9人の脚本家競作 劇団O.Z.E 「九人脳」 投票1位に大田享作「グソウ」 二つのせりふ、感情が乱高下


9人の脚本家競作 劇団O.Z.E 「九人脳」 投票1位に大田享作「グソウ」 二つのせりふ、感情が乱高下 投票で最も人気を集めた、大田享脚本の「グソウ」に出演する(左から)TOMOKI、上原一樹、蔵元利貴、花燈明佳=5月17日、那覇市銘苅のアトリエ銘苅ベース
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 劇団O.Z.Eによる演劇「九人脳」(オリジンlil主催)が5月11~18日、那覇市銘苅のアトリエ銘苅ベースであった。9人の脚本家が、与えられた三つのルールに沿ってストーリーを紡ぎ、役者たちが演じて形にした。縛りがあるからこそ生み出される表現の豊かさに、刺激や気づきの多い舞台だった。投票数上位3人の作品を上演する、アンコール上演があった17日を取材した。
 台本に課せられたルールは、出演者はくじ引きで決められた役者、脚本の最初のせりふは「だからいったさ」、脚本の最後のせりふは「コーヒーでもどうぞ」の三つ。山田享楽、古堅晋臣、大田享、キャンヒロユキ、久保深樹、けいたりん、高安剛士、真栄平仁、我那覇孝淳の9人の脚本家が挑戦した。
 観客の投票で1位を獲得したのは、大田の「グソウ」だった。「だからいったさ、あんたは死んでるんだよ」。天国に来た男(上原一樹)は、天国にいる女(花燈明佳)と男(蔵元利貴)に気づかされる。生き返りたいと頼む男は、自ら命を絶っていた。神様(TOMOKI)の計らいで生き返るも、また死を繰り返す。冒頭のコミカルで空想のような物語が、自らの死の理由を知った途端に一気にリアリティーを増す。決められた二つのせりふの間で感情が乱高下し、ループするさまが見事だった。
 2位はキャンの「共作」。AIに台本を書かせようとするキャンとAIとのやり取りが繰り広げられ、一本調子な台本が徐々に磨かれていく。出演は、秋山ひとみ、登川瞳美、儀保孝幸、具志堅興治。3位は我那覇作の「スタンドバイミー」。夏目漱石が「アイラブユー」を「月がきれいですね」と訳したとされるエピソードを引用する形で展開するラブストーリー。出演は渡嘉敷直貴、潮平けい子、新里優奈。
 総合演出を担当した新垣晋也は初の試みに「ルールがある方が盛り上がるし、脚本家に注目してほしかった」と狙いを話す。那覇市松尾にあった「わが街の小劇場」で好評を博した企画「日付変更線」の復活を期待し、「いろんな劇団が参加して祭りのようなことをしたい」と意気込んだ。 (田吹遥子)